ラノベに手を出してみました

九十九十九 (講談社文庫)

九十九十九 (講談社文庫)

バーチャルスペースの議論を読めばウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』を読むようなミーハーな僕は、東氏の『動ポモ2』を読んだあとにすぐさまラノベを読むしまつである。ちなみにこのタイトル『ツクモジュウク』と読むらしい。読むの大変だった。

物語は「第一話」、「第二話」、「第三話」、「第五話」、「第四話」、「第七話」、「第六話」という章立てになっており、「第二話」以降それまでの章を小説として読む視座が登場する。例えば「第三話」ではその登場人物がすでに「第二話」までを物語として把握しているという、ある意味入れ子状の構造をなしている。一応探偵小説らしいのだが、本書では謎解きに重点が置かれているわけではなく(むしろこれまでのミステリを批判するような台詞がよく出てくる)むしろこの奇妙な構造が本書の核となっており、前章までを読む主人公がそれまでの「物語」のなかに存在する「誤り」を訂正しながら進んでいく。同様の構造を持つ本としては例えばゴルデル『ソフィーの世界』なんかがあるわけだが、舞城の本作において特徴的なのは、最終話の主人公でさえこの特殊な物語構造から逃れられないということを悟っていることである。単純に言ってしまうと、主人公はこれが物語であることを分かっているのである。

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

UnKnownさんからのおすすめ。読んでみよう。