人間いいかげん史観

反社会学講座

反社会学講座

少子化、家族、都市再生政策、家賃、こうした建築や都市計画に関連するあれこれが社会学的考察から導かれているわけだが、その説明を「でもよくかんがえてみると」と冷静に突き詰めてみたときに見えてくるレトリックを告発する一冊。要するにタテマエに隠れたホンネを暴くわけで、「○○(例えば少子化)が○○(例えば年金問題)の原因じゃないと困るんです」という人たちを描く「もしもシリーズ」(勝手に今つけた)はコントっぽくて面白い。

社会学的考察のみならず日常でも多く散見される「昔はよかった」というノスタルジアに貫かれる言説の前提には常に「今よりよかった昔」がある。でも当の「昔」を検証してみるとそのときはそのときで悪かった、という「人間いいかげん史観」に基づきながら、その他もろもろの話題につっこみを入れている。結局今と昔を比べて悪くなったのは状況ではなく、「昔は良かった」という人たちの適応力なのだろう。