安針

東京日本橋には昔「安針町」という町があって、この「安針」というのは水先案内人という意味のようだが、この地の名前は徳川家康から土地の拝領を受けたウィリアム・アダムスの日本名「三浦安針」と深くかかわっている。

家康とウィリアム・アダムス

家康とウィリアム・アダムス

ノンフィクションの小説。16世紀のヨーロッパにとって東洋の貿易路開拓は国益に沿った大事業であって、イギリス人であるアダムスが一山当てようとオランダ船に乗り込むところからこの物語が始まる。すったもんだがあってボロボロになったアダムスらがたどり着いたのは「関が原の戦い」を間近に控えた日本であった。当時大老のトップだった徳川家康は旺盛な好奇心でもって外国からの知識を吸収していき、家康とアダムスとの間には友情とも言える結束が芽生えていく。妻子のあるイギリスに帰りたいアダムス、家康に尽くしたいアダムスとの間に生起する葛藤をいざ読まれたし、といったお話。

歴史にはとーんと疎いのでまったくフワフワしたこと(上のように)しか言えないのだが、幕末以降明治期において諸外国から召集された「お雇い外国人」に先立つこと2〜300年の時期に、徳川家康がどこの馬の骨とも知らない外国人を「家庭教師」化していたという事実に興味を覚えたのであった。だから読んだのだった。ただ残念なことにこの本では二人の結束に焦点が当たりすぎていて当の内容にはあまり踏み込んでいなかった。アダムス経由で家康がとある外国の都市計画をなしたという都市伝説もあるようだが、これに類する記述は全く無かった。ガセネタか。