鎮ブロック

一乗寺にて

遠目に見ると単なる古い打放しコンクリート仕上げの個人住宅なのだが、寄って見てみるとコンクリートブロックの組積造らしきことが分かる。この住宅、断定はできないが、おそらく中村鎮が発明した「中村鎮式鉄筋コンクリート」でつくられている(違ってたらごめんなさい。情報募ります)。同時代の建物としては「打放しコンクリートの元の元」(藤森照信)である「本野精吾自宅」(1924)が立命館の裏手にある。

鉄筋を中に通したコンクリートブロックと、レンガの組積とがいい塩梅にくたびれいてる。色合いも抜群。当時コルビュジエさえまだ手をつけておらず、世界中でもオーギュスト・ペレがためらいがちに使うにとどまっていた打放しコンクリート仕上げをここまで大胆にやってしまったのが本野であり、上の住宅の設計者であった(違うかなぁ、目地がきれい過ぎる気もするし・・・)。

ちなみにこちらが「本野自邸」。
今となっては安藤忠雄という強烈な個性とともに語られ、世界でも有数の仕上げを誇る日本の打放しコンクリートではあるが、個人的な印象としてはその程度の言説で止まってしまっているように思う*1歴史的に考察してみると思いのほか多層的にとらえることができるコンクリートに関してはフォーティの次作が待たれるところ。流行するイメージに流されず、その深みに入りながらこの素材の可能性を検討してみる必要がありそうだ。

*1:ちなみに、この世には打放しコンクリートの壁紙というものまである。壁紙の存在意義を揺るがしてやまないこの素材も、ン十年前だったらまったく需要が無かっただろう。