大阪個室ビデオ店放火

空間利用の想像力を

法をうまくすり抜けていたり、すりぬけるどころか違法だったりする店舗は確認されていないだけでかなりの数に上る。なぜここに火をつけたかに関しては分かりっこないので、ここで問題とされるべきなのはこうしたことだろうか。

  1. 避難対策の問題:店員による避難指示等々ソフト面でのとりくみ
  2. コストの問題:防火対策にどれだけコストをかけられるか
  3. プライベートの問題:個室空間をどう考えるか

1)
でも「防火・避難対策」って言っても想定されてるのはタバコの不始末で床が焦げるとかその程度だろうし、アルバイトの店員に避難対策ができるとはなかなか思いづらい。でも毎日この空間を利用する管理者であればその利用方法のバリエーションをもっと想像すべきだっただろう。違法云々よりも個人的にはこの想像力の欠如のほうを問題視したい。
2)
個室を増やすということがとりもなおさず壁量を増やすということを意味している限りは、それに比例して空間の難燃化にコストがかかりすぎるのは避けられない。「火が起きた」という空間的にローカルな情報を全体へと伝達する状況がそもそも想定されていないし、万に一つという危険性のためにその大きな金銭的コストをかけられるかというのは、現実的に難しい問題だろう。一方今回の事件を受けて同系列に危険視されがちなカラオケ店では基本的に全ての室を見渡すシステム(監視カメラとか)と、全室へと伝達する手立て(電話とか)が用意されている。営業上必須と思われるシステムが防火・非難対策にとって有益なものだといえるだろうか。
3)
今回の事件で個室ビデオ店とネットカフェとが同じように問題視されているのだけど、個人的には今回事件のあった個室ビデオ店と一般的なネットカフェとでは空間構成上大きな相違があると思っている。つまりネットカフェでは「個室」をつくるパーティションが天井まで達していないということだ。地上から2メートルあたりまでが壁で区切られ、その上は天井まですっからかんという空間のあり方(建築史的には「ザ・ユニバーサル・スペース」といえるだろうか)は、延焼(というか煙?)の早期発見をより容易にしたはず。基本的にこれらの店舗では監視カメラは個室内部をうまく回避し共有部分を映すに留まっているのだが、今後こうした「配慮」はセキュリティ面の重視によってなくなっていきそう。ただ個室だからって必ずしもしっかりした壁面をこさえなきゃいけないというわけでもない。案外すっかすかのオープンスペースでもプライベートな感じを受けるときもある。
規制の強化ばっかりで窮屈になるこうした事件の後こそ、空間利用の想像力を働かせるべきなんじゃなかろうか。