コールハースはこう言った

建築家R.コールハースとキュレーターH.U.オブリストの対談集

コールハースは語る

コールハースは語る

読者はいつ、どんな文脈でこれらが語られたかを知らされることなく唐突に「中国について」「ヨーロッパについて」彼らの対話を読むのである。政治文化経済を横断的に語りながらそれでもなお建築へと収斂していくのは、他でもなくオブリストが執念深くコールハースにそれを問うたからである。あくまでも推測だが、聞き手によってはこの本は建築書ではなかったかもしれない。オブリストの質問は時にすかされ、答えられることのないその質問はコールハースによる別の語りを誘発する。想像するに、コールハースはこの対談に「建築について」というアプリオリな前提を置きたくなかったのかもしれない。彼が何をすかしたのかに注目していないとディテールを、ひいては全体的なトーンを失いかねない。