一揆考

現代都市批判の実践本(として読みたい)

貧乏人大反乱―生きにくい世の中と楽しく闘う方法

貧乏人大反乱―生きにくい世の中と楽しく闘う方法

高円寺にあるリサイクルショップ「素人の乱」(最近大阪西成にも支店ができたらしい)の店長松本さんの本。デモやら暴動をそこらで起こしてる運動家みたいな人が、出自、運動へのめりこむ契機、いままでの具体例、なんかを綴ったエッセイのようなもの。面白いのはかつての「一揆」を参照しながら、デモや暴動そのものを一時的にできる離散的な集合体としてとらえているところ。都市の住みにくさに急ごしらえの「百姓軍団」が挑んで潰されるという、小難しい話のまったく出てこない一冊。2時間くらいで読める。
ちなみになぜ唐突にこの本かというと、立ち読みしたと言うのもあるのだけど、QueryCruiseでの南後先生によるシチュアシオニストに関するレクチャーのレポートを書いていたからでもある。彼らが「発見」された1980年代以降の文脈はさておき、結成当初の1950年代後半から1960年代の社会的背景(「貧困層の都心からの排除」「郊外化、ニュータウン建設」「路地の消滅」「視覚偏重の都市経験」、現代にあらず。50年前のこと!)に対する批判的意識のもとに、「都市の使い方」を実践で問うた芸術家軍団である。

ただ松本氏の運動に特徴的な点は、メンバーがまったく不定(3人から数百人)であること、そして各運動で掲げる大儀を必ずしも目的とはしていないということ。要するに「誰でもゴチャっと騒げる空間」がその過程で生まれてくることをよしとしているようにも感じるのである。もちろんこのあたりに気持ちの悪さと危険性を感じる人もいるだろうけど、常に「敗北」を意識しながら「徒花咲かす」こと、それもひとつの大きな徒花ではなく、小さくたくさんの徒花が各所で咲き散っているのはむしろ健全なんじゃないだろうか。