インフォグラフィックのために

イメージの読み書き

イメージの読み書き

イメージの読み書き

イッセイミヤケ「A-POC」のためのモーションキャプチャーを使ったブリリアントな映像で以前ちょっと紹介した佐藤さんの研究室が、2005年に出版された本。
引用

「イメージの読み書き」とは言葉で解釈できないもので、イメージとして確かに感じるものをどうやって現実に定着させるか、という試みである。(佐藤雅彦)

たとえば、こんなの。

佐藤匡さんによる「ヘリコプター」
うまく言葉にはしにくいのだけど、このイメージには僕たちの持っているヘリコプターのイメージをグイッとひきつける力強さがある。ような気がする。あるいは、おぼろげに思い起こされる「それか、否か」というギリギリの輪郭線をなぞるような面白さがある。だから「あ!」と思った瞬間、ついつい笑ってしまうのだ。そして次のイメージにもうんと笑わされた。
ちなみにタイトルは「ブルガリアヨーグルト」、山本晃士ロバートさんの着想です。

山本晃士ロバートさんによる「ブルガリアヨーグルト」
落ち着いて見ると、どう読んでも「ブリヨルガグールアト」にしか読めない。でも自分の脳みそはこのフォントと、この配色と、この傾きによって、毎回「ブルガリアヨーグルト」と読んでしまうのだ。というよりも、そもそもこのイメージにある一文は、読まれてさえいないんじゃないかとすら思う。なんかちょっと違うな、と一瞬思いながらも、「分かっちゃいるけど止められない」認識のアクションがグイグイと「ブルガリアヨーグルト」をプッシュするかんじに一杯食わされた感があって心地いい。タイトルにある「イメージの読み書き」とは、「それか、否か」というギリギリの境界線で自らの認識が駆け引きしてるこの感覚のことなのかもしれないな、と思ったりする。
そして、これまでインフォグラフィックはあくまでもグラフィック(名前にあるくらいだし)の操作の仕方をあれこれするものだ、と思っていたのだけど、こうした例を見ると「文字のヴィジュアライズ」が観者に与える影響が思ってるよりも強いことを強く意識する。急いでいたりするとてきめんにそうだろうけど、人間は思ってるよりも文字を読んでいないのかもとすら思う。文字であれ物であれかたちを持つものの、そのギリギリの境界線のもつ力を実感した一冊。