あなたにもミエル化?

どうやら今局所的に「Visualization」ということばを「見える化」と訳しているらしい。

あなたにもミエル化?―世間のなりたちを工学の視点から

あなたにもミエル化?―世間のなりたちを工学の視点から

そしてこの「見える化」というのは、著者の喜多充成さんによれば、つまりこういうことだそうだ。

隠れたムダや気づかなかった障害を、誰もが分かるような図や数字、実物で示し、問題点を明らかにすること。(中略)多数の人で問題を共有し、よりよい解決につなげようという前向きのニュアンスが込められたキーワードである。

たとえば隙間なくびっしり輸出車が積み込まれた自動車専用船。スーパーテクを持つドライバーの職人芸にうっとりしている限り気づくことはない、その裏に隠された緻密なシミュレーションがここにはある。どのように積んだら空間を最大限使えるか、どのような手順で積み込んだら最短時間で行えるのか、というひとつの「見える化」のプロセスに本書は焦点を当てる。だからある意味この本は「見える化」の「見える化」を試みたものなんじゃないかとも思っている。ほえー、というかんじ。
ちなみにこんな章立て

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  • 朝のホームルーム
  • 一時間目:うまい方法のミエル化
  • 二時間目:いくつもの未来のミエル化
  • 三時間目:本音のミエル化
  • 四時間目:顛末のミエル化
  • 昼休み
  • 五時間目:強さのミエル化
  • 六時間目:やりとりのミエル化
  • 七時間目:見えども視えずのミエル化
  • 八時間目:好みのミエル化
  • 放課後
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個別の話題に関してはちょっと疑問もあるけど、本書のコンセプトが面白いのでサクサクと読めた。「昼休み」「放課後」に掲載されている「チャンス発見学」の大澤さんと「渋滞学」の西成さんとの対談がとりわけ面白かった。
なぜ分かったか、いつ分かったかを後で被験者に聞いても言葉になって出てこない(大澤氏)
ちなみにこの前後の文脈はこういう旨になっている。でも目はすでに分かっている。「見える化」というのはとりあえず視覚的な問題ではなく、この鈍感な認識の遅さに対してちゃんと目を向けることなのである。という風に考えている。