ちりぬるを

色は匂へど 散りぬるを
我が世誰そ 常ならむ
有為の奥山 今日こへて
浅き夢見じ 酔ひもせず

いろは歌』は『涅槃経第十四聖行品の偈』の意を和訳したものである。ちなみに涅槃経の原偈は「諸行無常。是生滅法。生滅滅已。寂滅為楽。」というものである。一般的に弘法大師によるものとされてきたが、それより以前の平安中期に読まれた歌らしい。ちなみに弘法大師空海とイコールとされるがどうも間違いらしい。弘法大師の伝説が空海のそれに納まりきらないようだ。

ものすごく唐突だが今日イザベラ・バード旅行記を読んで出てきたのでちょっと調べてみたのだ。涅槃経だとかその辺の問題はすごいオモシロそうなのだがなんにせよ奥が深いのでちょっと怖い。でもちょっと調べてみたので大雑把にメモしておく。

上の涅槃経は仏教の四法印のうちの一つである。諸行無常がそれにあたり、他にも諸法無我一切皆苦涅槃寂静というものがある。諸行無常とは現実存在において常に不変のものはないという謂である。そして諸法無我とは変化するあらゆるもののうちで「私」さえも変化という運動なのであるという謂。この二つのうちの前者において不変のものを求める心を常執、後者において「私」の同一性を求める心を我執という。この常執、我執を持ち続ける限りこの世は苦であるというのが一切皆苦の意味するところである。ちなみに108つあることでおなじみの煩悩とはこの二つのうち我執から生まれる。煩悩がすべて消え去った世界を涅槃寂静という。この四法印とは仏教の他の宗教との区別化を図るためにあるもののようである。