エリック・オーウェン・モス

来年度の専修希望が半端じゃない数って…急にどうしたことなのだろうか。

前にバルモントやライスといったオヴ・アラップ(Ove Arup)関係でエントリを挙げたとき、構造家と建築家とのオーヴァーラップが云々と言うことを書いていたのだが、今回はそれとはちょっと違った文脈にあるのではないかという人について少し。

その人というのはエリック・オーウェン・モスのことである。

彼はカリフォルニアのカルヴァー・シティーを拠点としていて、上の建物もそこに建てられている。実作の形態としてはリノヴェーションなんかも多いらしい。ただその方法があまりにもドラスティックなので元の建物はほとんど死んでしまっている。おそらくそれが彼の方法論であり、その上に新たな生を与えるのだと思う(思いたい)。その点では前にスペインの「ソフィア王妃芸術センター(あってるかな?)」というところで見たゴードン・マッタ・クラークの手法と通じるところがあるのではないかとも思う。

これがマッタ・クラークの作品。多分廃屋をチェーンソーでゴリゴリ切り抜いている。こういう形で住居者の不在を現前させるというのは彼独自のものだろうけど。

しかしと言うかなんというか、エリック・オーウェン・モスの建物はどことなく「醜い」。端的に言って、下手をすると単に「センスが無い」と片付けられてしまいそうな形態である。ただこのモスのスタンスは、ポストモダンでも、ポストモダンの折衷主義に対するモダニズム側の流れ(ネオ・モダニズムになるのか)にも包摂しがたいものがある。具体的にはマイアー、ゲーリー、コープ・ヒンメルブラウ、アイゼンマンといったようなレイト・モダンとも構造表現ともデコンともつかないような形態になっているような気がする。

おそらくその微妙さに気付かないフリをしておけば「ネオ・エクスプレッショニズム」と言える(事実そう紹介しているところもある)と思うのだけど、ヴィドラーがきっちりと分かりづらく解説をしており、しかもその差異が空間に関連しているのだ、ということを知ってしまうとどうにも無視できなさそうなのである(これは個人的な話)。