嫉み混じりにコールハースは

ミュラー邸の実物大模型写真についてレム・コールハースは『S,M,L,XL』の中で「The House That Made Mies?」というちょっと奇妙な物語を書いている。当時の状況をある程度トレースした物語になっているのだが、真偽がよくわからないところをちょっと飛ばして引用。

……巨大なヴォリューム、立方体のテントは、それが体現しようとした薄暗い古典的な建築よりも非常に軽く、そしてより示唆的である。思うに――ほとんど嫉み混じりに――、未来の家のこうした奇妙な〈生起enactment〉がドラスティックに彼を変えたのだろう。その白さと重さのなさは彼が〈まだ〉信じていなかったものすべての圧倒的な啓示だったのではないか?非物質の顕現?このキャンバスのカテドラルは〈もうひとつの〉建築への急なフラッシュフォワードではなかったか?……この大失敗fiascoこそがミースを促し、19世紀から彼にまとわりついた痕跡や重力を慎重に拭わせ、消失と分解、そして浮遊のテクトニクスを生み出させた。このキャンバスがカーテンウォールへと到るのか?ミース後期のあらゆる作品にはシルク、ベルベット、そしてレザーが柔軟なカウンター・アーキテクチャーとして使用されている。この石工の息子の最も重要な情事love affairはリリー・ライヒ、つまり柔軟なテクスチャーのスペシャリストとのものだった。


コールハースはこのミュラー邸模型写真が「石工の息子」、つまりミースを変えたという。「19世紀の痕跡」というのはおそらくシンケルの影響のことを指しているのだろう。確かにこの写真の中の建築はマッスを欠きながらもヴォリュームがあるという奇妙な効果を生み出している。ドラスティックにミースを変えたのかに関しては判断しかねるが、ミースのパブリシティにおける写真の使い方に関してこの写真を一つのポイントにしてみたい。