今年最後のプロスペクト

今年最後のプロスペクト終わり。

題目も「建築における“メディア”の偉力について」に決定。建築それ自体もメディアではあるが、建築におけるドローイング、写真というあまり焦点の当てられにくい対象がいかに実態としての建築作品や建築家のイメージメイキングに加担しているのかということをミースのパヴィリオンを通してみていこうという試み。ちなみに「偉力」はそういう意味であって「威力」の誤植ではないです。あくまでも急いでて間違えたとかではないので。

ポイントというか複線としてはドローイングと写真というカオティックなメディアミックスの紐解き。具体的にはドローイングにおける透視図(遠近法で描かれたもの)と直角図(立面図とか平面図)の相違を以下のように考えてみた。非常にサックリと以下に図式化。

●透視図:自らが「いま」「ここ」から空間を見据える受動的な視点
●直角図:経験的な透視図法的視点を条件付けるような「空間を均質的な全体としてとらえる視点」

こうして分割してみると、透視図が建築家の理念的な建築図案を表象するときに使用されたり(ピラネージとか)、クライアントに「どうですか」と提示してみたりするときに使用されていることがなんとなくわかる。一方の直角図はよりプラクティカルで、建設プロセスにおいて業者さんがわかりやすいように伝達する役割を付与されている。少なくともミースにとってこの分割はある程度妥当なように思われる。パラーディオなんかは厳しくて「透視図は不実だからダメ!」なんて言っている。ただフォーティーも「でも直角図の「誠実さ」も怪しいもんだよね」と手厳しい。

とりあえずこの分割法でいくと、写真はこのどちらをも包括している。ただ使用のされ方として、19世紀まではほとんど「直角図のようにして撮影する」というのが建築写真においての定式だったようだ。1851年フランスで歴史建造物の修復事業に写真が使用されたのだが、その結果撮影された建築写真は大体直角図法のアングルに合わせてあるように思われる。いかんせん資料が少ないので推測の域を越えないが。