ボケとツッコミ

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用

ながーい序で著者が述べているように、この本のねらいはファッションとして科学の概念を「ポストモダン」の現場で使用している人たちを告発することにある。それ以上のものではない。序が長くなったのは彼らの仕事が「ソーカル事件*1」としてスキャンダラスに取り上げられ、いらぬ反論を受けてきたことに対するさらなる反論のためらしい。

長く晦渋な引用の後にピリッと辛辣な本文が引用部を批判する。これがフォーマットとなっているから最後らへんはほとんど「ボケ」と「ツッコミ」のせめぎあいみたいになっている。「ボケ」の部分ははっきりいって全く分からないし、実際「ツッコミ」の部分も専門的な説明をあわせて「わからない」ということしか言っていない。

「近づいていっても結局読めない御影石の標札」を複数の写真(まず引いて、それから近づいて)で見せた後に、クローズアップの写真を出しながら「結局読めへんのですが」と突っ込む木村祐一のコントをちょっと思い出した。

でもこれは決して彼岸の火事ではない。文章を書く以上常に注意しておかないといけないな、という自戒もこめて。

*1:この事件のきっかけとなった、1994年に著者の一人アラン・ソーカルが『ソーシャル・テクスト』誌に提出して掲載された出鱈目なパッチワーク論文「境界を侵犯すること」は付録として本書に収められている