チュミと断絶

ヴィドラーの「パラ・アーキテクチュアル」を考えるために、そこで対象にされているチュミの理論をちょっとおさえておく。

建築と断絶

建築と断絶

パリの「ラ・ヴィレット公園」を作ったチュミの理論書。このプロジェクトにおける彼の意図は建築を「作品」からバルトのいう「テクスト」へと変化させることにあった。

言い換えると、アウトプットのレベルである種の決定不可能性を作り出そうとする意図が彼にはある。完全に体系づけられることのない、開かれたテクストとして建築を生み出すこと。このレベルで建築は哲学などと同じように、思考方法の一つになる。

具体的には表記におけるシニフィエを排除すること。象徴性を漂わせるシニフィアンとしての構成要素を自由に配置すること。彼はこのプランに対して映画を参照にするのだが、こうして出来上がるのは建築とも映画ともつかない何か別のものである。ヴィドラーの言う「パラ・アーキテクチュアル」とはこの次元をさしているようだ。

不気味な建築

不気味な建築

ただこれはアンフォルム「な」建築でもなく、因襲的なディシプリンを破壊するようなものでもない。ただ「不適格な建築」である。ヴィドラーはチュミのプロジェクトに対して絶妙な言い回しで「微妙」だと言いながら、それでも経験的な「パラ・アーキテクチュアル」ができるならば、それは因襲的な領域を打破していくのではと論を進めている。