アメリカからのねらい
タイトルが潔い。原題も『モダン・アーキテクチャー』だし。
- 作者: ヴィンセント・スカーリー,長尾重武
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 1972/01
- メディア: 単行本
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建築の多様性と対立性 (SD選書174) (SD選書 (174))
- 作者: R・ヴェンチューリ,伊藤公文
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 1982/11/30
- メディア: 単行本
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冒頭の本ではその名の通り「近代建築」を論じているのだが、当時までに出版されたギーディオンの『空間・時間・建築』(1941)やゼーヴィの『空間としての建築』(1953)、バンハムの『第一機械時代の理論とデザイン』(1960)、ブレイクの『近代建築の巨匠』(1960)なんかを批判的に消化している。文献改題もおまけでついているのだが、とりわけバンハムの技術決定論的な視座に対してはかなり否定的に語っている。そのためか、オーガニックな点を前景化したゼーヴィなんかとの親縁性を見て取ることもできる。しなくてもいいけど。
- 作者: レイナー・バンハム,石原達二,増成隆士
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 1976/01/01
- メディア: 単行本
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というのも、彼の視点はちょっと独特で、アメリカ人だからといっては語弊があるが、ヨーロッパで発祥した近代建築をアメリカから読んでみるというテーマを伴っているのである。出版の時期にはまだミースがシカゴ(だったかな)で活躍しており、ナチがらみで亡命してきたドイツの建築家なんかも腰をすえてプランを展開している頃にあたる。
本書では具体的に、フランク・ロイド・ライトというアメリカの建築家を中心にして考察が進められている。ライトはアメリカ人だが当時のアメリカの建築状況を鑑みると少し異端(経済/芸術みたいなあやふやな感じでとらえてみてもよいかも。ライトは後者)であり、他方でヨーロッパの建築家たちはライトの原理に触発されはしたが、彼の手法に関してはどうにも微妙な態度をとっている。ミースはいい例だと思う。このアンビバレントなかんじを理論的に体系化したのが本書であるといえるだろうか。最終的にはヨーロッパに行って、コルビュジエのロンシャンを褒めて終わる。
コレ
ちょっと気になったのは、スカーリーが「パヴィリオン」の語で示そうと思っているところのものが、結局「ユニヴァーサル・スペース」といえてしまうのではないかということである。要するに使用法を特定しながら機能として空間形成に反映せず、無柱空間にその多様な可能性を残しておくということである。60年代にはまだ「ユニヴァーサル・スペース」の概念はなかったのだろうか。なぞである。