パオロ・マッツァリーニ『つっこみ力』

つっこみ力 (ちくま新書 645)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

最近局部的にブログでちょっと話題になっていたので読んでみた。あいかわらずミーハーだ。

パオロさん(たぶん日本人だと思うけど)によれば「つっこみ力」というのはメディアリテラシーに代わるものらしい。それは「愛と勇気とお笑い」でできている。愛とはわかりやすいこと、勇気は既成概念を崩しにかかること、お笑いは付加価値であり、この付加価値によって人はひきつけられるのではないかという話。

人は正しさだけでは興味を持ってくれません。人はその正しさをおもしろいと感じたときにのみ、反応してくれるのです。……「正しさ」にこだわり続けるかぎり、論理力もメディアリテラシーも、つねに敗れ去る運命にあるのです。いままでも、これからも。(59〜60ページ)

これが第一部(講演形式なので正確には「第一夜」)。

ただ「おもしろいか否かが真偽をこえる」とかそういう話ではないと思うし、論理至上主義とかデータ至上主義(これは第二部で批判されている)に対して「ちょっとちょっと」とストップをかける以上のことは書かれていない。だから本書はいざ実践でどうすべきかということが書かれているハウツーものではない。ただそのスジの人(深い意味はない、経済学者とか社会学者のことだ)が読むと要所要所で伏線が張られているらしく、その意味では「つっこみどころ」満載なんだろうなと思ったりもする。

考えすぎだと思うけど、この本自体が議論の中心になってつっこまれて、ひとつのトポスになることをパウロは考えているんじゃなかろうか。だとすれば著者にとってべつに「愛と勇気とお笑い」からできている「つっこみ力」の厳密な定義なんかは大して重要じゃなくて、その定義のあいまいさの中に何が読まれるのか、本書がひとつの場所としてどうパフォーマティヴにひらかれるかが問題となるのだと思う。

まあブログ間での議論(ザ・トラックバック合戦という感じだった)が僕のなかで先にたってるのでこういう読み方になってしまった。くわしくは[404 Blog Not Found:書評――つっこみ力]をご参照ください。