デザインもの

『言葉と建築』のエイドリアン・フォーティが90年代初頭に上梓したデザイン史。

欲望のオブジェ―デザインと社会 1750‐1980

欲望のオブジェ―デザインと社会 1750‐1980

デザインされたものをデザインした人の個人的才能へと全面的に帰してしまうのはどうだろうか、というアンチ・ニコラス・ぺブスナーな一冊。もっと文化的背景を分析すべきであるという本書と同一の傾向にある著作としては1948年のジークフリート・ギーディオン『機械化の文化史』がある。余談だが、この本の原タイトルMechanization takes commandといい、58年のarchitecture, you and meといい、ギーディオンのタイトルのつけ方はなかなかニクい。ちなみに後者は『現代建築の発展』というなんとも無難な邦題がついている。
モダン・デザインの展開―モリスからグロピウスまで

モダン・デザインの展開―モリスからグロピウスまで

機械化の文化史―ものいわぬものの歴史

機械化の文化史―ものいわぬものの歴史

ただフォーティはギーディオンに対しても批判する。彼の想定する文化的背景はある種の「機運」のようにきわめて曖昧としたものでしかない、というのがその理由である。他方フォーティは、政治を含めた社会の動向や経済的なファクターなんかを掘り下げている。