吉村順三

「建築は理屈じゃない、感性である」

吉村順三設計図集

吉村順三設計図集

小学生から絵を描き始め、中学生で住宅コンペに入選する。という怪物的エピソードとともに神格化されている日本住宅建築の巨匠。1908年生まれだから同時代人としては前川國男丹下健三などがいる。代表的な建築としては「軽井沢の山荘」「愛知県立芸術大学」なんかがある。

中学時代からその素養を示していたようだが、派手になることなく一見平凡なプランの中に抜群のプロポーションをちりばめるというのが吉村の手法である。肩幅と同じ二尺(約60センチ)を基本単位とするヒューマン・スケールによって、「作品としての建築」というより「住みこなしていく住居」という趣がでている。

伝えることが難しいとされる彼の魅力であるが、その一つとしてユカ座とイス座のバランスがうまく取れていることがあげられるのではないだろうか。建築学校の卒業設計「最小限住宅」(増沢洵の「九坪ハウス」の原型)はモダーンなプランでイス座だったのだが、実作を見てみるとケースバイケースでタタミもでてくる。そしてこの二つの座式をまとめ上げるための「重心」が、低すぎず高すぎずのいい塩梅になっているように思われる。