ナイン・サイト・シアーズ

Architourism: Authentic, Escapist, Exotic, Spectacular

Architourism: Authentic, Escapist, Exotic, Spectacular

本書内「nine site-seers」でプロジェクトや作品が紹介されているアーティストは9組。以下Joan Ockmanによる総論をかいつまみますが、資料が全く無いのでご了承ください。

ディラー+スコフィディオ、マーサ・ロズラーはどちらもモチーフが空港である。ローカルなヴァリエーションを取り入れながらも、セキュリティチェックをはじめとする空港システムがあくまでも規格化されていることによって、ローカルな差異がさほど問題にならない、制御され均質化された建築的環境という平凡な空間が増加する。このような、同一性という麻痺させるような枠組みの中に忍び込む超現実性が彼らのプロジェクトから喚起されるだろう。

ツェン・ウォン・チー(Tseng Kwong Chi)が名だたるモニュメントの前で撮ったセルフポートレートは、アイデンティティと脱領域化との関係に焦点を当てている。自らを彼自身のイメージへと投影することで観光のまなざしの疎外感を具現化しつつ、世界中を制覇したいという観光の野望を風刺している。

マーク・ロビンズはマイアミの夜景と同市への新規移民労働者とをビルボードに並置することで、観光の神話とそれらを下から支える見えない経済との不均衡を提示する。また二項対立モノとしては他に、観光の空間と「現実の」空間との対立を喚起するジュリアン・ローズフェルトやピエロ・スタインのプロジェクトがある。

アネット・バルダウフ&ドリット・マルグライター、シルビア・コルボウスキーの二組はラスベガスもの。前者はヴェンチューリ以降のラスベガス発展期において、エンターテイメントや芸術がどれほどマーケティングやデザインと区別がつかなくなりつつあるかを示している。また後者のプロジェクトにおいて、ギャンブラーの楽園ラスベガスは避難場所というより逃走不可能な場所となっており、ハイエンドな建築はデザインびいきの消費者のための、とりつかれたような追いかけっこに見える。

街中の広告をすべてツインタワーの形で切り抜いたハンス・ハーケは、都市の集合的意識において二つの塔がヴォイドとして存在することによる終わりなき意味の戯れを示し、他方で彼は911の建築的残像がどのようにして広告、大衆文化、日常生活の円環のなかへと取り込まれるかを先取りして提示している。