タイル見学

わけあってちょっと帰省したのでその足で「タイル・ミュージアム」に行ってきた(実家から車で約20分)。

最近できたとばかり思っていたのだが「増設」が2006年なだけであって、いくつかの施設は90年代中ごろにはできていたらしい(詳細はあまり覚えていない)。ということで「タイル・ミュージアム」(正式名は「世界のタイル博物館」で上の写真の正面がそれ)も「INAXライブミュージアム」という施設の集合のなかの一つであることが判明した。

のっけから読み方さえ分からないであろう「常滑」は、「とこなめ」とよむのだが、昔から焼き物が盛んで・・・以後略・・・INAX本社がある。ヒューマンスケールの街道にぬっとある窯と煙突がなんとも情緒ある趣で休日はいい散歩コースになっている。古くからある工房だとか民家だとかを改装したお店も点在しているのでうってつけだ(ただ近くに「とこなめ競艇」があるので休日はモーターの音が通奏低音のように鳴り響くことになる。これは個人の好みの問題)。最近中部国際空港ができたので常滑の名が一躍メジャーになったかと思ったのだが、言ってみるとなんとも垢抜けない感じ。

タイルとレンガがどう違うのかよくわからなかったのだが、一通りタイル三昧になった挙句「強化防水のために釉薬を施して焼いた化粧張り用陶磁器薄板」という暫定的な定義を思いついた。間違っていたらご指摘ください。一応タイル発祥は16世紀のオランダになっていたが、イスラム圏ではもう少し前から墓とかの化粧張りにタイルを使っていなかったのだろうか。ちなみに個人的には「釉薬の有無」がキモだろうと踏んでいるがよくわからない(タイル史なんか発生時期だとか流通の側面を考えても面白そうだ)。そもそもレンガだって加工しようと思えばできるじゃないかと思っていたところ、加工したレンガはどうやら「テラコッタ」と呼ばれるらしいことがわかった。ライトの帝国ホテルがいい例だ。そしてなんともうまい具合に、「土・どろんこ館」(上の写真)の一室でフランク・ロイド・ライトの展示をしていた。9月末までやってます。

水と風と光のタイル―F.L.ライトがつくった土のデザイン (INAXミュージアムブック)

水と風と光のタイル―F.L.ライトがつくった土のデザイン (INAXミュージアムブック)

関連書籍。ライトがレンガの色にこだわった挙句たどり着いたのは内海(常滑から南下)の粘土だった、常滑に「帝国ホテル煉瓦製作所」が設けられた、というなんともトリビアルな情報を獲得できた。しかも当時のテラコッタやレンガを再現してみるというビデオまで見られる。これらを中に空間を囲うようにつんでいき、そこにコンクリートを流し込んで耐震性をあげたとのこと。マヤ文明などとの関連性を指摘されるなんとも異端児な近代建築家ライトの装飾を、それのみ取り出して技術的な側面から開示するというのも結構面白いものだなと思った。そして全体を見たかったら北へ行けばよい


地域別でタイルが展示されている「世界のタイル博物館」(正直ちょっと退屈)、ひたすら昔の便器が並ぶ(二階に。さすがINAX!)「窯のある広場・資料室」(ここの窯は内部が談話室になっているのだが、レンガを積んだ低いヴォールドによる現代では珍しい空間構成をなしている。壁面が天井になる、レンガの色がいやに濃密である、間接照明である、この三要素がここを独特の場所にしております。オススメ)、館自体が土まみれ(レトリック)の「土・どろんこ館」(内装の左官技術が見所です)、体験できる館×2、トイレを前面に押し出した「トイレパーク」などなど、ゆっくり一日かけてみて回れる施設だなと思った。近くに寄ったら行ってみてください。