手塚貴晴講演会

屋根でごはん食べられたらいい、をそのまま形にしてしまった『屋根の家』でおなじみの手塚さんが大阪にこられました。キャパ300人。運良く抽選に当たったので梅田のフェニックス・ホールまで行ってきました。

手塚夫妻のサイトより。これがその『屋根の家』。
近作『ふじようちえん』がテーマの講演会でしたが、実質的には『屋根の家』『キョロロ』のお話もうかがえました。今日の講演会は、というよりも手塚さんの建築は、と言ったほうが正確なような気がするのですが、クライアントさんの人となりがとてもよくわかる。その家とその家に住む人とのエピソードが溢れて溢れてしようが無いというとても楽しい講演会でした。これでおしまいにしてもいいのですが、抽選に外れた人もいるのでもすこし詳しく以下。まずは箇条書きで。

1)環境とヒトのこと
2)ヒトのふるまいを復活させる
3)「温室」を壊す

いろいろ興味深いお話が聞けましたが、とりわけ上の3つ(僕が勝手に考えたトピックです)かと。

メキシコの花屋。本文とはまるで関係ないです。こっから下が長いなぁ(って吹出しつけたい)。

1)環境とヒトのこと
『屋根の家』のエピソードにこんな話があったそうな。とある建築家が「屋根の上は夏暑くて冬寒い。住人が上に登ってごはんを食べているなんて言うけど、嘘だ。フィクションをつくるべきではない」という批判をなしたところ、住人自らが反論した。曰く「夏は暑くない朝と夜に出ます。冬は暖かい昼間に出ます。これは当たり前のことではないのですか?」。ヒトは環境をコントロールばかりしたがるけど、もっと環境に歩み寄るべきではないだろうか、とのこと。

2)ヒトのふるまいを復活させる
手塚氏が照明のことをお任せする照明家角舘政英さん(ぼんぼり 光環境計画)の話。夜景はなぜ美しいか。夜景をつくる一つひとつのあかりにはそれぞれストーリーがある。そして各々のあかりは大なり小なり異なっているわけで、人はそこに「ひとのふるまい」をみたいのではないか、とのこと。
横浜元町がどれだけ頑張ってお金をかけて街灯を増やしてもちっとも明るくならないとき、彼がなした提案は「その街灯を全部消す」だった。6000ルクスの光にかき消されていた、500ルクス以下の光が照らす「ひとのふるまい」が復活したというエピソード。
3)「温室」を壊す
『ふじようちえん』の話。手塚さんが園長とお話してやらないように決めたことは、「屋根の上に遊具を作る」だったらしい。「こうして遊びなさい」を強制する遊具なんか必要ない。雨どいから落ちる雨水や、建物を貫く巨木といった、その場所を構成するあらゆる要素は子供たちにとっての遊び道具になるという考え方から来るものだったようだ。こうした象徴的な意味での「温室」のはなしが一つ。

これも手塚夫妻のサイトから。『ふじようちえん』ですね。
もう一つは最近はやりの「高気密・高断熱」よりも「低気密・高断熱」のほうがいい、という物理的な意味での「温室」についてのもの。高気密の、空調がしやすい環境にいると窓を開けなくなってアトピーの原因になったりするし、閉じ込められるよりは開放的なほうがいいでしょう、とのこと。「壁の無い『ふじようちえん』は空調コストがかさむ」という下馬評に対して、「一年の3分の2は窓開けっ放しで空調かけてない」と園長。
そうそう、この幼稚園の園長さん、ユニークな人です。書き出したらキリが無いし、手塚さんもおそらく話出したら止まらないだろうと思って小出しにしてた感があります。全くの推測ですが近々メディアに出るんじゃないかと踏んでいます(追記:手塚さんの方はもうすでに出演されてたそうです)ので、そのときのお楽しみに。アテが外れたらまた何かの機会にアップしてみます。