迫慶一郎講演会のこと

アーキフォーラム第六回ゲスト迫慶一郎氏の講演会に行ってまいりました。ちなみに前々回の重松さんの時の様子はこちら

場所は大阪本町のTOTOテクニカルセンター。立ち見をあわせると100人を超えるくらいの盛況でした。内容は中国で主に彼が手がけた建築物の紹介。「仕事人」というのが彼のイメージ。
そして導入部はこんな
彼が以前訒小平の言を借りながら述べた文「国内の建築家であれ海外の建築家であれ、中国ブランドの建築を建てられる建築家こそよい建築家である」がよくあらわしているような、ナショナルアイデンティティの核となるべき国家的建築物でさえ国外の建築家に建てさせる中国の現状の紹介からスタート。ただこの「中国ブランド」の紹介として「スピード・スケール・スコープ(建築家の仕事範囲)・スタート(現代建築の開始の遅さ)」をキーワードとして挙げられていたのだけど、生み出されるべき個別の建築の定義としてはいまいちわかりづらかった。で、例として挙げられていたのは「CCTV」のOMA、オリンピックメイン会場「鳥の巣」のヘルツォーク&ド・ムーロン、そしてオリンピック水泳会場「水立法」のPTWなど。ちなみに下の画像がそれ。

表面はエチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)という2層構造の高性能プラスチック・フィルムだそう。

くわしくはこちら。「Wired Vision:北京オリンピックの『水立方』:建設過程を写真ギャラリーでご紹介
建築物の紹介がてらに
迫氏が中国で最初に手がけた「金華キューブチューブ」は日本で言う国土交通省の建物にあたるらしく、いきなり公共建築デビューとなるはずだった。ところが4年たっても躯体しかできあがらず、いつの間にか民間に転売されてクライアントが代わっていたとのこと。このように、彼の建築物紹介がてらに焦点が当てられる各々の背景にはヘビーなものが多かった。例えばプロジェクト半ばのものを丸ごと買い取って迫氏にお願いされるクライアント、途中で敷地が2倍になったプロジェクト、どう考えてもオーバースペックでにっちもさっちも行かなくなった、でも柱とスラブだけは建ちあがっているプロジェクト等々。こうした難ありプロジェクトを引き受けて対処していく様が、調整役、というか「仕事人」というイメージを喚起するのでした。もちろん日本でも類似した立場に立たされる建築家もいるだろうけど。
中国で建てる

途中某プロジェクトのプレゼン用映像を見せてもらったのだけど、それがオランダのアーティスト「デルタ」の絵(上の画像はCBCNETさんからお借りしました)っぽくてカッコよかった。この映像は日本のアーティスト「重力」(ウェブサイトないかな?なんとも探しづらい名前)に制作してもらったとのこと。中国だと広告費がいっぱい出るからわざわざそうしたらしい。
21世紀あたりになってやっと現代建築がスタートし、都市の緑化率が40%を越え、都市の文脈が分析している間にも刻々と変化していく(「今どうかよりもこれからどうなるかが大事」)中国。オリンピックバブルもそろそろ終わる頃だけど、熱気溢れるシビアなお隣さんでくるくる働く様子が浮かぶ迫氏の講演会でした。