佐藤修悦氏のこと

いつか公共建築を作ったらこういう人に(半ば勝手に)サインをやってもらいたい。

「ガムテープで道案内の文字をつくる警備員」こと佐藤修悦氏による「修悦体」。制作の様子はYoutubeで見えますし、有名どころ「デイリーポータルZ」に彼にまつわる記事がありますし、上の画像をお借りしたトリオフォーのサイトは彼についてのまとめページになってますしで情報には事欠きません。

ちなみにトリオフォーは佐藤氏のDVD出してます。
ちょくちょく建築物を見に行く身にとって、カッコいい建築物にWordでプリントアウトしたサインがぺたぺた貼ってあるのを見るたびに「もっと気合いれろよー」と思ったりします。「並サイン」から「見せサイン」(オア「勝負サイン」)に変えろよ、と。とりわけ地方にある現代建築物なんかはてきめんに「並サイン」の場合が多いのですが、foaの「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」で「トイレ」とプリントアウトされたA4の紙を見たときは尿意すら引き下がるようでした。

別に建築家の「作品」を大事にしろ、と言っているわけではないわけです。むしろサインという「デザインしろ」が丸々残っているということに対して残念に感じているのであって、例えば上のメキシコの地下鉄のピクトグラムのように、分かりやすく(らしい)且つ面白いサインがもっと見たいのです。
ところかわって日本の新宿(日暮里)駅という複雑な空間に寄生する「修悦体」がとても魅力的に感じられたのは、サインという補助的にとられがちな要素が空間の雰囲気をガラリと変えつつ、それでいてなんとしっかりとユーザブルに存在していることよと思ったからだ。補助的要素が空間構成要素として「立って」いると思ったからだった。まあ行ったことないので「と想像した」ってかんじですが。

青木淳氏が菊地敦己氏と組んだ「青森県美術館」。建物とロゴサインが一丸になる「ヴィジュアル・アイデンティティ」も、補助的要素をそれだけに留まらせないところに肝がある気がする。「デザインしろ」をなるたけ多く動員して、より多層的に「そこ」を体験できたほうが楽しい。作り手側としても他分野からの刺激があったほうがモチベーション上がりそうだし。「V.I.」というとちょっと腰が引けるけど、結局は「体験」に焦点を絞ったシンプルな考えなのではと思ったりしています。