ファッショーン

「ファッション・ニュース」誌の菊地成孔氏による連載が本になりました。

最新号(書影がないな)は「菊地成孔パリへ行く!」なる特集あり。本になるはず、と思って買わなかったんだけど。
で、そんな菊地さんの出版記念イベントに行ってきたんですね。

『服は何故、音楽を必要とするのか?―「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽達についての考察』
※販売は17日なのでまだはまぞうがヒットせず。ということで出版社インファス・パブリケーションズさんのサイトから書影を拝借しました。
パリ・ミラノ・ロンドン・ニューヨーク・トーキョの五都コレクションでのいくつかのメゾンを使用された音楽から批評しつつ、もともとダンス等のためにつくられたのだけどファッション・ショーのとき(パリコレーとか)に使用され(「召還」され)る楽曲を「ウォーキング・ミュージック」と評して概観するという試み。それにしても「まえがきにかえて」でエイゼンシュテインの名前が出てきたときはちょっと身構えてしまった。「映像」対「音楽」を統一しようとして頓挫してしまった理論の話。ただ当の菊地氏には、これをランウェイの上で繰り返される映像に限定すれば統一理論もあながち不可能ではないのでは、との思いもあってのことだったもよう。
映画の弁証法 (角川文庫)

映画の弁証法 (角川文庫)

余談。たしか「ファッション・ニュース」誌のほうでは各号が扱ったシーズンで使用された楽曲がリストになってたのだけど、さすがにそのアーカイブは本書に収められておりません。これは面白かった。というのも、メディアを通してのみ知りうるショーは、常に映像、であって、そこで何がかかっているのかについてこれまで意識したことがなかったから。個人的にはかつての「ファッション通信」が唯一の映像ソースであり、あの中村真理氏の独特な声がBGMのようなものでした。

菊地氏のお話で面白かったのは、ファッション・ショーとヒップホップが2010年以降融合するだろう、というところ。そのこころは両者の構造がかなりの程度で近似しているから、ということなのだが、それは一言で言うとどちらも「ズレ続ける」ということがキモになるということになる。ショーでのモデルは音楽のリズムから常にズレ続けるようにウォークする(ぴったり合うと笑ってしまうから)し、フローするラッパーはリズムにひっかかるか否かのところでパフォーマンスする。いままで相容れないと思われてきた、にもかかわらずきわめて近似する構造を今現在もっている、この二者が、ちかぢか融合するだろう、という話。個人的には「ほぇー」という感じで首肯も反駁もできず。
上のあげたNERDファレル・ウィリアムスがルイヴィトンとタッグを組んだアドは菊地氏がそのとき言及していたもの。ルイ・ヴィトンの広告、であります。