どこかしらへ向けたゆるめの助走―その4

最近はじめつつある調べモノのためのメモをかねて。まずは以前「ランドスケープ」の授業で紹介していただいた、国などから発注されるプロジェクトはどうやって流れていくのかのフローチャート

  1. 国(官公庁)、企業による発注
  2. 経営コンサルタント
  3. 建築・不動産コンサルタント
  4. 大手設計事務所・ゼネコン・ハウスメーカー
  5. 個人設計事務所

例えば最近人気の安藤忠雄建築事務所でさえ最後の「個人設計事務所」にはいる。安藤さんの場合は独特のキャラクタと行動力(政治力?)で結構上流まで食い込んで行かれるだろうけど、そんな有名事務所でさえ端末にならざるを得ない現状をこのフローチャートは示している。キモは「キャリアの算定」だ。所員数が多く、技師を大量に抱える「個人設計事務所」、例えば黒川さんのところや隈さんのところなんかは3番、4番あたりで(も?)仕事を請けるらしい。ただあざといなぁと(このシステムが)思うのは、ネームバリューのある事務所は、たとえ端末で仕事を請けたとしてもその名前が一番前にくるというところである。だから大抵誰が基本設計を担当したのかなんて分からないことのほうが多い。
疑問1:一番初めにプロジェクトを受け取る経営コンサルタントは何をするのか?
企業発注であればキーワードは「ライフサイクルインパクト(「ライフサイクルコスト」のほうが一般的かな?)」だろう。ある企業がどれだけの環境負荷を一定のサイクルでかけているのかが直接その企業の評価(そして株価へ)へと繋がってくる。ということは、その企業の建物(自社ビルとか)もその要素のひとつ、いやその大半を占めるのではないだろうか。「サスティナビリティ」「サスティナブル・デザイン」は局地的に火急の問題なのである。そして「コストとしての建築」をどうマネジメントしていくのかは「ファシリティ・マネジメント(施設管理)」という形で具現化している。
ただ、以前何かの雑誌で読んで驚いたのは、ヴォーリズの設計で有名な神戸女学院大学が「資産価値ゼロ」と評価されたという事実である。同大学で教授職につく内田樹氏へのインタビューだったと記憶しているのだけど、彼曰く「ここのホールはどこの大学のよりも音響設計が優れているのに、そういう数値化しづらいところは無視されている」とのこと。
参照

疑問2:膨大な数にのぼるコンサルタントはどのようにして選択されているのか?そして何をコンサルタントしているのか?
おそらくこうした複雑なシステムは、ある程度規模の大きいプロジェクトにかかわるリスクを巧妙に分散する手立てとしてあるように思う。例えば東京ミッドタウン六本木ヒルズとを比べ、森稔というリード・オフ・マンが明確に出ている後者に対し、リスク回避が念頭にある前者は無難に仕上がっているという意見は隈・清野『新東京論・TOKYO』でも話題にのぼっていた

新・都市論TOKYO (集英社新書 426B)

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ただこれはそういうシステムに「なっている理由」であって、システムの内実を説明するものじゃない。それぞれがどのような取り組み方をしているのだろうか。そしてこれまでこのようなトップダウン型の進め方のみに焦点を当てていたのだけど、こうした枠組みが対処しきれない(あるいはしていない)ところ、例えば今僕が住んでいる山奥の地域のソフト面を重視したプロジェクトなんかはどうやって進めていくべきなんだろうか。そのひとつのキーワードとして、布野さんの講演会でも紹介のあった「タウン・アーキテクト」がくるはず。次回はそのあたりに焦点を当ててみたい。
参照