Volumeのこと

この前は序文を挙げたので、

今回はVolumeそのもののこと。新しい建築作品の紹介もなければ、有名建築家にまつわる論考もない、それでもなお建築な雑誌。


17号「コンテンツ・マネジメント」の表紙。日本だと南洋堂のオンラインショップでも買えます。
その前身も含めると約75年も続く建築雑誌ARCHIS、レム・コールハース率いるAMO、そして建築におけるコミュニケーションの新たな形式を発展させるために組織されたC-Lab.(コロンビア大学「laboratory for architectural broadcasting」)が共同で発行する雑誌が「Volume」。雑誌ARCHISを出版する「Archis」のあり方は結構特徴的で、即興性を旨とする公共空間への介入を組織する部門(Archis RSVP events)と財団(Archis Foundation)とによって構成されている。さらにアルキス財団は「Archis Publisher」(出版)、「Archis Intervention」(運動組織らしきもの)、「Archis Tools」(コンサルらしきもの)の三部門からなり、このうちの「アルキス・パブリッシャー」が本誌の出版を担当している。
ここでボリュームのウェブ・サイトにある「About Volume」から引用

「ボリューム」は、デザインが取り組むべき課題を見定めるインディペンデントな季刊誌である。本誌は「建物をつくる」という建築の定義を飛び越しつつ、環境をデザインするという包括的な視野へと至り、社会構造に対するより広い姿勢を提唱し、そして建築の文化的政治的重要性を再び取り戻す。建築をいつでも、どこでも、いかなる方法でも言い表すための世界的なアイデアのプラットホームとして創設されている「ボリューム」は、建築の領域の拡大やデザインの新たな任務を示すのである。

「環境をデザインする」という建築の定義でもって社会構造を眺めなおすこと。それを伝達する手段として雑誌「ボリューム」があると考えると、ここに「C-Lab.」が噛んでいるということがよくわかる。ただ実際に「環境をデザインすること」において重要なのは局所的な状況へいかに適応していくかということになるだろうから、その個別具体性を拾い集める手段として、ローカリティーを旨とするインターナショナルなイベント組織集団「Archis RSVP events」の存在があるのだろう。なおアルキス財団を構成する「アルキス・インターベンション」は当該集団から派生したものであって、領域にこだわらない議論の場を提供することをモットーとしている。この二者の関係性をはじめ、各組織がどのように入り組んでいるのかをうまく紐解けると、雑誌ボリュームやその後ろにある運動体の動きをより興味深く見ていくことができそう。

ちなみにテーマのバックイシューは以下

  1. Architecture must go beyond itself
  2. Doing (almost) nothing
  3. BROADCASTING ARCHITECTURE
  4. BREAK THROUGH
  5. The Architecture of POWER. Part1
  6. The Architecture of POWER. Part2
  7. The Architecture of POWER. Part3
  8. Ubiquitous China
  9. SUBURBIA AFTER THE CRASH
  10. Agitation!See What Architecture ins Shaking
  11. Cities Unbuilt
  12. AL Manakh
  13. Ambition
  14. Unsolicited Architecture
  15. Destination Library
  16. ENGINEERING SOCIETY
  17. Content Management
  18. After Zero

ロッテルダムの「オランダ建築基金」とアムステルダムの「モンドリアン財団」のサポートによってボリュームの出版が可能になり、実際のプロデュースや出版は「アルキス財団」によっている。現在では広告からの収入もあるようだけど、紙面の邪魔になるほどの量はない。ただこの雑誌を読むのはかなりマニアックな層だと想像できるので売り上げからの収益はあまり期待できなさそう。となると出資と広告収入がこれからもメインになるのだろうか。とはいえテーマ設定から紙面構成までかなりエッジーな雑誌なので、言ってみればこれからどんな広告がつくのか見ものだなと思うところもある。あるいはまた別の方法で彼らがボリュームを回していくことになれば、それはそれでかなりエキサイティングなことだと思う。
とはいえ、まだ17号のほんの少しを読んだだけなのでボリュームの具体的な方針や方法、その可能性に関してはかりかねるところがある。ということでRADでボリュームの読書会をします。第一回目は今月24日(土)13時から。はじめはガイダンスで終わると思いますが、興味を持たれた方は是非