万博のやつだからここにある

foaデザインの愛知万博スペイン館の壁面は今、Yoshizuya名古屋名西店に屹立している。

それはショッピングセンターだ。

万博終了後タイル片が国境なき医師団日本に寄贈され、シンワアートオークションが主催するチャリティーオークションに出品されたのが2005年(参照)。その行方がここだったのかは資料がなかったので(ここみました)わからないが、実際スペイン館壁面のタイルはここと、Yoshizuyaの清洲店と、島津本店にある。しかもどうやらこれにとどまらず他のいろいろなところにあるのだ。こうなるとその他のいろいろなところを調べてみたくなるのが人の性で、その人の性へと誠実に向き合ってくださった人のウェブサイト*1がすでにあった。それを見て自らの人の性をいなすことにし、いなしついでにリストをつくった。

この拡散の帰結とはなんだろう?エジプトから略奪したあとフランスまで持ち帰られた塔のようなまがまがしいモニュメンタリティもない。イデオロギーもないし、プロパガンダもない。記号性とその効果があるだけ。「これって万博のやつだよね?」「あー、ほんとだ」それだけ。タイルだからバラせるし、持ち運びできるという利便性も手伝っただろう。でも考えてみればこの断片が「万博のやつ」として求心力を持つというのは興味深いことかもしれない。建物が「残る(される?)」ということに対してなにがしかを言っているようでもある。これはfoaがデザインしたタイル片だからここにあるのではなく、「万博のやつ」だからここにある。大抵の人はfoaなんてしらない。万博という時間と空間へとこの建物は属していたのだ。だからそういう来歴を持つこのタイル片が媒介になって、各所でそれぞれの想起を促しているのならば、それはそれで面白いことだ。そう考えるとこれは万博だけの話じゃなくなるかもしれない。建物だってモノだからバラバラにできるし、それを欲しいという人のところに譲ることだってできる。神社や寺の中にはそうやって作られたものもある。そうなるとこれはタイルだけの問題じゃなくなるかもしれない。建築がいつ建築なのか、に触れる問題かもしれない。

*1:このウェブサイトはスペイン館の壁面のみならず、他の万博施設がどこに拡散しているかをフォローし、なおかつ写真まで撮影してくださっている。これはすごい。