建築とコンサルタント
たとえばいまあなたはコンサルタントだとする
依頼を受けた企業はAという問題に悩んであなたを呼んだわけだが、あなたの仕事はAを解決することではない。その依頼者にアドバイスを与えて、Aを解決させることがあなたの仕事となる。そもそも依頼者がAの解決を望んでいない場合もあるので、そのときは事態がよくなったと彼に思わせることがあなたの仕事だ。コンサルタントとは依頼者の要請によって、彼らに影響を与える人のことを言う。
- 作者: G.M.ワインバーグ,木村泉,ジェラルド・M・ワインバーグ
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 1990/12/01
- メディア: 単行本
- 購入: 21人 クリック: 197回
- この商品を含むブログ (93件) を見る
この本はコンサルタントの秘密という題であるのだけど、ここからはコンサルタントが具体的にどのような仕事であるのかは正直あまり分からない。むしろアドバイスする人がアドバイスするときどのようなことを頭にいれておくべきか(たとえばルウディーのルタバガ法則*1「第一番の問題を取り除くと、第二番が昇進する」)に関して書かれたものである。たとえばこんな風に。
問題解決を前提とすれば首をかしげてしまいそうな行動も、コンサルタントが依頼者に影響を与えて問題を解決せしめるものだというその性格に照らし合わせて考えると理にかなう。この本はこの非合理的(に見える)合理性についてのものでもある。
建築家もコンサルタントだとする
建築においてもコンサルタント業は存在するけれど、そうではなく建築家の仕事そのものがコンサルタントである、と言えるのかもしれない。もちろんアドバイスを与えて家を依頼主に建てさせろ、という話ではない。家族も企業も同じく人間の集まり(最小単位だけど)なのだから、彼らがどういおうと使用者は問題を必ず抱えている。その問題を「建築」というツールを使って解決させること。その役割が建築家なのである、という具合。
そう考えると建築とはアドバイスのようなものだ。建築物が問題の解決策だと考えるとよくない。竣工は問題の解決じゃない。そもそも住人(使用者)が抱える問題の解決なんてフィクションじゃあるまいしできるわけないのだ。そしてこの比喩のポイントはどちらかというと建築家のあり方とその対価。建築家にとっても料金は時間に対して支払われるようになればいいんじゃないかと思ったりもする。そうすれば新築とか改修だとかといった対立する考え方だっていまとはちょっと違った意味を持ってくるはずだと思うのだ。
*1:そんな法則しらん!聞いたことがない!!という方もいると思いますが、この本で出てくるたくさんの法則の名前は著者のエピソードが関係しているので、聞いたことがないのは当たり前です。もっと知りたいと言うかたはこちらのページを参考に:http://hp.vector.co.jp/authors/VA000092/misc/TheSecretsOfConsulting.html