バラガンのこと

火曜日に「コミュニケーション」という授業があるのだが、そこでルイス・バラガンについてやることになった。とりあえず導入としてこの前の『世界遺産』を見たのだが、これから何するかは不明。個人的に結構好きな建築家なので楽しみだ。

ルイス・バラガンの建築

ルイス・バラガンの建築

ところでバラガンに関する日本語の文献は、彼の知名度にしては少ないように思う。建築家でもある斎藤裕さんによる写真集やエクスナレッジやカーサ等建築雑誌での特集を除いてあまり見た覚えがない。メキシコにしか作品を残さなかった彼の世界的著名性はおそらく80年代になってやっと広まったようだが、そこに彼に関する言説の(日本での)少なさが関係しているのだろうか。
Luis Barragan: The Quiet Revolution

Luis Barragan: The Quiet Revolution

Barragan - The Complete Works

Barragan - The Complete Works

印象論もはなはだしいが、建築系の学生、というより建築に興味のある人なら大抵バラガンの色彩に魅力を感じているとよく聞く。実際僕も一回生のときはレポートをバラガンで書いた(といっても時系列的に追っただけのひどいもの)。画一化するモダニズムにメキシコの文化である色彩をもちこんだこと、このグローバルとローカルのアウフヘーべ(日本語で書けばいいのに)がまずその魅力の理由として考えられるだろう。実際、ケネス・フランプトンの有名すぎる論文『批判的地域主義にむけて』(だったっけ)にも出てきたと記憶しているし、そうでなくても彼の論の範疇に入るべき建築家である。

Barragan Guide

Barragan Guide

彼の色彩はひとつの魅力であるが、それだけを取り上げて語ることが難しい。画家であり友人であるチューチョ・レイエスの影響が云々される言説しか聞いたことがない。また色味に着目するだけでは日本での設計に生かすべき何かは得られない(ように感じる)。あくまでもメキシコという土地柄がバラガンの色彩の魅力を形作っていると思う。でメキシコへ行き、彼の建築を見て思ったのは、今まで見たバラガンの建物は内装も外装もつねに枠取られていたということである(写真だけだったから当たり前だけど)。バラガン邸の内部を歩きながら、彼の間取りや開口部の取り方のちょっとした気遣いのようなものを見落としているなと思った。特に窓のフレーミングには重点を置いていたようである。より広く、というだけでない。狭いスリットを連続して並べ、ガラスに着色することで、内部へと取り込まれる光が重要な装飾となる。そしてこの光の効果を考える際重要なのは、そのとき内部にどう人が配されるかあるいはその内部をいかに人が動くかであろう。バラガン建築のポイントはこの問いに対するバラガンの解決法にあるのではないかと踏んでいる。彼の自邸には、光の装飾を享受する人の存在感があるように思われるのである。