階段モノ
普段見慣れているはずなのに、いざパースや図面を描いてみると細部がわからなくなるもののひとつが階段である。トリビアルな話だが、水平面(ふみづら)と垂直面(けあげ)は550≦けあげ×2+ふみづら≦650というおおよその定式が存在している。
- 作者: Silvio San Pietro,P. Gallo
- 出版社/メーカー: L'Archivolto
- 発売日: 2002/04/01
- メディア: ハードカバー
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ゴージャスですね。
階段はただ昇降するだけのもの、としてしまうと単なる厄介モノである。ところが下階と上階とをつなぐものだと考えてみると、そのつなぎ目を担うものとして階段は重要な役割を得る。例えば足腰が弱くなればなるべくけあげの低い階段が求められるようになる(高齢者向け住宅はフラットな平屋にすれば事足りるという考え方にはどうも賛成しがたいものを感じている)というように、勾配やかたちによって下部上部間の関係性が違って見えてくる。一階から二階への昇降、あるいは逆への下降途中で腰を下ろし家を眺める場所(踊り場とか)があると、それだけで生活の中に日常とは別の視点を持ち込めるのではないだろうか。また階段は大体の場合強制的に吹き抜けをつくるため、地下室への採光手段としても効果的である。もちろんこれは地上階においても同様であり、階段の具体的なかたちが光のあり方に影響を与えたりもする。上の写真の例では吹き抜けは作られていないものの、奥に取られた開口部からの光が黄金色の階段に反射して特殊な効果をあらわしている。こうした違和感が居住体験及ぼす影響は案外大きいのではなかろうか。