山崎さん講演会

6月12日のメディアショップ講演会の話。ゲストはstudio-Lの山崎亮さん。とにかくパワフルで豪放磊落(難しい日本語使ってみた)な人という印象。一方向的になりがちな講演会にあってまず初めにしたことは聞きに来てる人の自己紹介だった。「一方的に僕が話して終わりというのも面白くないので、同じネタを目当てにしてどんな人が集まってきたのか知って帰ってください」と山崎さん。「気になる人がいたら交流しましょう」とのこと。
まずはさっくりと箇条書きで
タイトルは「人口減少時代のデザイナーはどうやって仕事を得るか」(ちょいうろ覚え)。200枚近いスライドと、なぜか今日は喉が・・・というエクスキューズが出たガラガラ声とで山崎さんが示した方法は、

  • 待ってたらダメ。設計が必要とされる前提を企画しよう。
  • 建物をつくるよりも、どうやって今ある建物を使っていくかが重要。

つくるからつかう
純化すればこの二つ。今あるものを使ってるうちに誰かから空間へのニーズが出てそれが設計へとつながっていくなら、その「今あるものの使い方」をまず「デザイン」してみようじゃないか。というのが前者。後者はまあそのまま。その根拠としては、1)公共事業にかけられるお金もどんどん減ってくし(維持管理費ばかりが増えていく)、2)「刷新」へのとどまらざる欲求をどこかで止めるべきだ。山崎さんも途中言及されていたスタルクの「あの発言」は象徴的だった。以下参照のこと。

新しいものをつくるだけがすべてじゃない、今あるものの新しい使い方を提案すること。こうしたモットーの山崎さん事務所は、年間100通くらいの企画書を書くらしい。設計というよりもマネジメントの提案だ。そしてこれは今「ディベロッパー」がやっていることだったりする。ちなみに100の案件のうち、通るのは20くらい。でも企画書を書かない設計事務所よりは高い勝率なのだ。
ハコモノからムダヅカイへ
面白かったのはこんなお話。ある島が市に吸収合併される段になって、その島に数億円が保管されていることがわかった。吸収合併によってそのお金は市のコントロール下にいってしまう。だからその島はその数億を元手に国と県とからそれぞれ数億を借り、そのまとまったお金で島にホールをつくろうと提案した。このきわめて典型的な「ハコモノ」行政に対し、山崎さんは一言。「やめなさい」と。それに代わる提案は、公益信託への保管によって市の使い込みを避けつつ、一年に1000万ずつ無駄使いをしなさい、というものだった。年1000万が30年で3億。それだけの年月があればまちおこしはできる。
あいだにたつ
「かたちを信じすぎる」建築家と「かたちを信じない」コンサルタントとの間に立つこと。studio-Lさんの仕事を現在の建築業界に位置させるならこうした言い方になるのではないだろうか。この両者の間でバランスをとりながら、まずソフトを、それからハードを考えていくのである。こうしたスタンスはこれから先の「建築家」の在り方を確実に示していると思う。

マゾヒスティック・ランドスケープ―獲得される場所をめざして

マゾヒスティック・ランドスケープ―獲得される場所をめざして

『マゾヒスティック・ランドスケープ』山崎さんが(も?)書いている、まちの面白い使われ方を紹介する一冊。名前の付け方がまたナイスです。