パトリック・ブランのこと

昨日のランドスケープパトリック・ブランPatrick Blancと彼の垂直庭園について。垂直庭園とは要するに壁面緑化のことだが、日本で見られるような貧相さはまったくない。とにかくわさわさで、それ以上に、美しい。フランス国立科学研究センターの植物学者でありながらフランスの芸術文化勲章やロイヤル・アカデミー・オブ・アーキテクチャーといった賞をいくつも受賞している通り、アートや建築に与える彼の影響は絶大なものがある。

垂直庭園について
パトリック・ブランの垂直庭園を構成する植物は土に接していない。というよりも実は地球上の60パーセントの植物は土に接していない。むしろ植物にとって必要なのはミネラル、光、水、この3つである。垂直庭園は3つの要素からなっており、既存の建物表面から順にこうなっている。

  • メタル・フレーム
  • ポリ塩化ビニル層10ミリ
  • ポリアミドのフェルト170〜180ミリ

水遣りは屋上から。ミネラルを含んだ水分はフェルトの毛細管現象で満遍なく行き渡る。いわば彼の植物はフェルトに生えているわけだ。まったく同じ素材ではないだろうけど、以前エコフェスレポで紹介したサントリーが開発した緑化用新素材「パフカル」も土を使っていない点で比較的類似している。簡単に言ってしまえば土、あるいはしばしば使われるスポンジ等では保水能力に偏りが出てくることがネックとなるのであった。

垂直庭園が一般的な壁面緑化と違うところ
使用している素材の違いのみならず、垂直庭園と普通の壁面緑化が違う大きなポイントとしてメンテナンスをあげることができる。日本での壁面緑化ビジネスはまさにメンテナンスやアフターサービスで持っている(と思われる)。つまりこまめな手入れが植物にとっても経営にとっても必要なのだが、他方でパトリック・ブランの垂直庭園は年に3回か4回手入れすればオッケーらしい。そもそもビジネスのあり方が違うともいえるだろう。もちろん、膨大な植物を観測した結果として垂直庭園の良質さが保たれていることは言うまでもない。ちなみに日本での彼のお仕事はこんなところで見える。

ただ大阪のマリテファサードは正直ちょっと失敗かもなと思う。フレームに直接巻きつけるようなシステムをとっていたと思うのだけど、これが幾分か貧相に見えてしまいがち。最近あまり見てなかったので今度もういちど見てこよう。

思ったこと
パトリック・ブランの仕事と比較してみて少し思ったことは、サントリーパフカルも案外優れた商品なんじゃないかということ。キープウォッチングしていきたい。