スーパーウィンドープロジェクト
昨日は朝から下鴨レジデンスプロジェクト( hanarerad )の作業。床の微調整をした。お昼には上賀茂神社近くの今井食堂へ。ここは煮さばがうまいことで有名だ。さて店に入ると両サイドはまるごとカウンターで、皆が壁に向かってご飯を食べている。これはちょっとギョっとする。ちなみに煮さばに関してはもうむしゃむしゃ食べた。ここは煮さばだけではなく、コロッケもうまい。中のコロッケのすりつぶし加減がすごいのだ。クリーミーとさえ言える。これをアツアツで食べていたら、さぞやうまかったろう。「すでにさめていたのか」と思われるかもしれないが、さにあらず。確かに揚げたてを持ち帰った。でもとある事情でさめてしまったのだ(ただ、あろうことか、さめてもうまかった)。今回はそのコロッケをさますことになったとある事情の話。
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今井食堂をあとにし、北区上賀茂にある「SuperWindowProject」というギャラリーを訪れた。作業中だったのでジャージにつっかけ、頭にはタオルといういでたちでだ。場所はここ。
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オーナーであるバロン・オスナさんが、庭付き一戸建ての住宅をギャラリー兼住宅へと改装し、車に乗らないから必要のなくなったガレージを部分的にオープンしている。そしてこのギャラリーを使ってアーティストの紹介などをしている。これがSuperWindowProjectの概要だ。
元ガレージの方のギャラリーでは現在アバンギャルドなフランス人漫画家ピエール・ラ・ポリスPierre la Policeの展示をしている。円谷特撮の影響をモロに受けたような構図と、写真なのか絵なのか判別しがたいようなタッチが特徴的だった。ここでオーナーのバロンと立ち話をし、このギャラリーは彼が自分で改修していること、カウンターの後ろにあった鉄板でできた格好のいい本棚も彼の自作であることを聞く。彼は建築が好きなのだそうだ。
それから一人の作家を紹介してもらった。マティユー・メルシエMathieu Mercierという名の作家だった。「建築的なんだ」と。それから元住宅、もとい今もバロンが住んでいるほうのギャラリーへと案内してもらう。メルシエの作品が、普通ならば縁側になっただろう廊下の突き当たりに、見える。それは3つのボックスからなり、あたかも建物のように見える。でも近づいてみると、そのボックスは服とおぼしき布地で覆われているのだった。一階から二階へと上がる階段の照明もメルシエの作品。パイプのようなものでできたライトだ。粘性の異常に高い水分が滲み出し、それが発光している瞬間のようにも見えなくは無い。電球はそういうキュートなかたちをしている。もう一点、彼の作品は二階の元オーディオルームにもあった。空の絵か、またベタな、と思いきや、「写真だよ」とのこと。空が写った車のボンネットを写真に撮ったものだそうだ。よく見ると引っ掻き傷が見える。よく見ると、って一体なんだ。ちなみに元オーディオルームの本棚にはTNAの「輪の家」の写真が。「これ誰の作品?建築家の名前だけが載ってないんだ」と言うので、教える。
- 作者: Mathieu Mercier,Michel Gauthier,Delphine Coindet
- 出版社/メーカー: Jrp Ringier Kunstverlag Ag
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: ペーパーバック
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ふんふんと一方的にガイドしてもらってはいたが、よくよく考えてみるとものすごく生活に近いところに作品がポンポン置いてある。玄関の靴箱の上、エントランスホール兼階段室、縁側(になりそびれた廊下)の奥、客間、窓際、階段の照明、元オーディオルーム、などなど。ギャラリー兼住宅と紹介したが、本当に兼用している。キッチンがやったらとモダンで、これまた誰かの作品かと思いきや「僕がつくったよ」とのこと。もうわからん。
改修されている元々の家のほうも、なんだかへんだ。エントランスホール兼階段室は無駄に3メートルくらいの高さがあるし、縁側スルーしてるし、ほかは洋風なのに客間だけはなぜか和室だし、元オーディオルームには驚くほどでかい照明がついていただろう穴が見えるし(バロンがとったらしい)、その壁はコークの小口が見えるややオブセッションな仕上げになっているし、庭に植物がわさわさしているし、どことなく小ボケ感がある。元住人はどんなひとだったんだろう。
何となくだけれど、バロンの改修は複数回目かもしれない。所有者の、所有者による、即興合戦を想像するとちょっと楽しい。彼は改修というけど、でも実際には床にカーペットを敷いたり、照明をかえたりしかしていないらしい。でも個人的にはその方がいいと思う。彼が車にのらないことでガレージがあいててよかった。そして「リノベーション」とやらの名の下に、この住宅に「ギャラリー」をつくらないでくれてよかった。