バグース池袋店

八月十六日、
バグース池袋店。ブースの大きさ(1200×2000くらい)と高さ、コミックの検索システム、ドリンクバーの種類の多さが快活クラブと似ている。違うところはバグースの内装が黒くて暗いところ。快活クラブはテーマカラーオレンジ、しかも誰が得するのかよくわからないリゾート的なあしらいを施している。さて、バグース。の池袋店。JR池袋駅東口を出てサンシャイン60通りを少し行った人通りの多いエリアにある。せいか、かなりの数の個室が常に埋まっている。ように見える。満席になったネットカフェは、当然の帰結ながら、総体的に生活音がすごい。プライベートスペースから出た音が重なり集まって空間全体にあふれている。都市の群集とは違う。ガヤガヤしているのに、ガヤガヤしている人が見えないからだ。しかもそれは普段使うような意味でマスにはなっていない。彼らはそれぞれ個室の中にいるのだ。念願の漂流ネットカフェを読む。
いらない補足。ネットカフェバグースは正確には「グランサイバーカフェバグース」と言い、株式会社バグースの展開するエンタテイメント事業の一環なのだそうだ。このほかにもビリヤード、ダーツバー、レストラン(隠れ家、という名前)、ラグジュアリーカラオケが並ぶ。【ネットカフェ】【バグース】

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八月十七日、
新潟にいくつもりがついたらそこは長野。松代を松代と間違えたので腹いせに松代を観光。江戸時代の学校建築が残っている狙いはそこ。駅前に置いてあった無料貸し自転車で別にくるはずじゃなかった街を走っている。悪態をつきながらバシャバシャ写真を撮り続ける。そして狙いを定めていた文武学校へ。思ったより人がいる。観光客なのか地元の人なのかはよくわからないが、思ったよりは人がいる。個人的には別に行くつもりではなかったところへ、行くつもりの人たち、というか実際にちゃんと行っている、がいるのだ。それはそうだ。その後引き返し、廃屋と化したボーリング場を尻目に、借りた自転車を返し新潟に向かったのであった。【松代】【長野】【文武学校】 

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正しい八月十七日、
アトリエワンのコテージに泊まる。八人定員のところを六人で泊まる。でも生活をしていくうちに、規模としては合宿サイズなんじゃないかと思いはじめる。このコテージは中心から三方にボリュームが伸びる建築で、そのうちのひとつのボリュームで六人でご飯を食べていると、つかわれていない残りの空間がやけにさみしい。むしろ三つのボリュームの細かなレベルの差や段差の付け方は、常に誰かがどこかにはいる、というような種類のグループワークにちょうどいいのではないかと思いいたる。複数班に分かれて個々にトーク、その後で全体集会、再度分散なんてことを十五人くらいでやったら楽しいだろうなと想像する。微妙に付けられた角度の違いで密談も可能だなと想いをこらす。想いをこらすというのは要するにいま空間を持て余しているということだ。六人だからだ。ただ十数人ここに入るとおそらく寝る場所に困るので、全体集会の後数人が飲み続けて寝ないというプログラムを追加する。【建築】【アトリエワン】

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八月十八日、
やっとアートを見に行く。広大なエリアに膨大な作品がある、という越後妻有アートトリエンナーレのいいところは、もうはじめから全部見てやろうという気にもならないということかもしれない。夕方運転。将来ある若い才能を摘み取ることにならず安心。みんな生きててくれてありがとう。夜温泉に入る。口からエクトプラズム。ご一緒した海外からの男性は、湯が熱すぎるからか、ずっと足だけをつけている状態で機を見ていた。【運転】【アート】【温泉】

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八月二十一日、
昼は秋プロジェクト用の模型づくり。夜は梅田哲也さんと山本精一さんのセッションを聞きにsin-bi。その場にあるもので出した音を操作したり増幅したり展開したりしていくという演奏。演奏というか音出し。音出しっていうか共演。共演な。やっぱりセッションかな。バンッ!という破裂音と共に光が灯り、すぐに消える。カミナリを見ているようだと思う。現象とその現象のもたらす音とのつながりがそこにあるのだ。それは全体的な暗さによってぼやかされ、機械を通す操作によってぼやかされる。もちろんそれが正しく判断できたとしてもそれがどうしたというかんじではあるのだけど、その音の由来がそこに転がって投げ出されているという状況がどうにも楽しいのだ。生活音でもなくいわゆる演奏される音でもない、とにかく音としかいえない音(説明が面倒だというのもある)があふれてくる場所が、ある。前半はおとなしくギターを爪弾いていた山本さんは後半。七台のギターを円状に並べ、てぐすをそれぞれの弦に結びつけ、ひとところからビンビンと引っ張って音を出していた。そうだ。ギターというのは木に張られた糸をはじいて音を出すものなのだった。【音楽】【sin-bi】