キャッツ&かなかな堂

八月二十八日、
ネットカフェ。メンズ・プレミアム・スペース、キャッツ。そのいかがわしい名前が示すとおり個室ビデオとネットカフェを足してそのまま溶解させたようなアマルガムをなしている。誤解を招くとよくないので言い添えておくと、この空間、無駄に綺麗である。DVD閲覧はオプションで割高。基本料金一時間300円。12時間2300円。ナイトコースが22時から翌10時までで平日1300円。ウィークエンドはプラス300円。DVD閲覧を含めればさらに上乗せ200円。金曜日でDVD除外1600円。これで12時間は安い。入店時に歯ブラシとタオルを渡してくれるサービスもよいし、各室にバスタオル(シャワー利用料金は200円かかる)や枕が常備されているのも思慮深い。繰り返すが店内は綺麗だし、禁煙喫煙がきっちりと区別されているので、そのへんうるさい人にもうれしい。みたび繰り返すがとりわけフロアが綺麗であることは好感触。ほとんどホテル。
一室の大きさは1500×2000。広い。入ったところがちょうど角部屋だったことと、柱型が室内にせり出していた(580×1100)ことを考えると通常よりやや広めにとってあるだろうことを差し引いても広い。しかもほぼ完全個室。入店時に渡されるタオルと歯ブラシに、実は鍵もついてくるのだった。つまりネットカフェが扉をどうするのかという問題に戦々恐々としてる間に、メンズプレミアムスペースキャッツは各室に立派なドアをつけているのであった。ほぼホテルというのはこのことであり、通常よりやや広めにとってある「だろうな」と言うのは鍵があるから他の空間が測れなかったということ。これがおそらく個室ビデオのカルチャーなのだ。断言したがここは要確認。それにしても立派なドアを開けたとき、広いとはいえ奥行きが2000ほどしかないほぼ個室が目の前にある、という体験はなかなかに刺激的だ。ちなみにほぼ個室、というのは、ドアの上部、天井との突合せに約200ほどの隙間が取られているからだ。全てのドアの上がそうなっていたので、おそらく材が足りなかったという類の消極的理由からだとは思いづらい。各室には空調機が備え付けられ、非常用ライトや避難経路の指示がでていたので、この空間はネットカフェのそれよりもやはりホテルのそれに近い。という存在形式。マネーウォーズを読む。

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八月二十九日、
比燕荘。京都女子大のとなり。

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八月二十九日、
秋プロジェクトの打ち合わせでhanare。その後桂の漫画喫茶かなかな堂にYさんと。奈良のカナカナとは無関係。ワンオーダーで一時間本が読めるというオールド・ファッションドなシステム。平日は午前三時までで、休日前は午前三時まで。一階は一人がけのカウンターと四人がけのテーブル、二階はソファ席。二階に人はおらず。本棚のあるところは床から天井までぎっちりと本で、本棚の上にも本が並び、そのうえにも本が積まれているので本棚のちょうど上のところにある本を抜き出すためには身長とスキルと勇気が必要。逆サイドのエリアには本棚に囲まれたカウンターが存在し、そこに座ると視界がすべて本で埋まる。物理的な奥行き以上の広がりのようなものを感じる。漫画喫茶人はなかなかに複雑な空間に立ち向かっているのかもしれない。いきなり最終回を読む。

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八月三十日、
製図講習。

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八月三十一日、
ケヴィン・リンチ廃棄の文化誌。モノ、場所、時間、人間、これら棄てられるものについての本。シンプルなメッセージを届けるために関係するありとあらゆるトピックスが叙述されていく(しかもそれがおおむねおもしろい)。彼が廃棄物に向き合う際つねに根底に流れているのは以下のような問いだ。「だれにとっての廃棄なのか。」そしてリンチのメッセージはこうだ。廃棄という行為を楽しいものにしよう。その前段階として噛ませられる提言はこうだ。waste(廃棄)とwastefulは違う。wastefulと異なり廃棄には必ずしも価値のないものばかりではない、と。要するに、価値ある廃棄に引け目を感じる必要はないし、むしろそれ自体を楽しいものにすればいいではないか。ということだ。ただしこのメッセージのなかでの「価値」というものがいったいなんなのかを彼は意図的に示していない。しかしこの価値、あるいは価値基準こそ彼の議論の根幹なのである。最終章いかにして廃棄するのか、にとりかかる。

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九月一日、
QC打ち合わせ。講師候補を数名挙げ、それぞれ三人ずつの二グループをつくり、各テーマを考えてみた。順番が前後してしまったが、これからもろもろ資料を集める。

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九月二日、
朝。洛北出版のTさんに、Sさんの付き添いでお会いする。出町柳makiにて。Tさんはお一人で洛北出版を切り盛りされており、最近では廣瀬純さんの死ねキャピタルや、石田美紀さんの密やかな教育などを出版されている。スキンヘッド、耳ピアス、サングラスのイカツイ容姿からは想像だにできないほど物腰の柔らかい方。秋プロジェクトに関してうれしいご提案をもらう。makiのアイスコーヒーがおいしい。上澄みのように乗ったミルクがとりわけ。Tさんが帰られた後、Sさんと秋プロジェクトのテキスト、ブックリスト打ち合わせ。その後Tさんよりすぐさまご連絡をいただく。