ヒーリン・フィーリン四条河原町

九月十一日、
ネットカフェ。ヒーリン・フィーリン四条河原町店。高島屋の通りを挟んだ隣、ドラッグストアの二階と三階。複数フロアを利用したネットカフェはおおくあるが、ここの特徴は、それを繋ぐ階段室が本棚になっていること。なかなかに壮観ではある。全体的に余裕ある空間構成をしているため、本の量が多かったり、個室の数が多かったりするものの、圧迫感はさほどなく、そこがよいところでもあり、悪いとまではいかなくとも、不満なところだともいえる。スケール。シングル席1100×1900、フラット席同じ、マッサージ席1200×2100、フラットシートのペア席【1】1400×1500、【2】1700×2100。総体的に広い。ボックス席は一律の料金なので、このように多様なバリエーションがあるということはよいことだと思う。パーティションの高さはすべて1600。フラットシート【2】は扉が付いていない代わりにわざとつきあたりが作られ、意図して入らない限り入れないようになっている。
なお、この店舗では月ごとにテーマが決められ、お勧めコミックが紹介されている。9月は食欲と読書。秋到来!おいしい食べ物を紹介したい系コミック。コミックでお腹バンザイ!ヒリフィリスタッフより、とある。紹介されるコミックとして、美味しんぼラーメン発見伝喰いタン大使閣下の料理人おいしい関係築地魚河岸三代目、バンビ〜ノ、新味いちもんめ、中華一番。以上九冊。よつばと!を読む。

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九月十二日、
リトルプレスやZINEを取り扱い、店舗を持たず常にどこかへ出張して販売をするnot pillar booksさんという本屋さんがあり、そのオーナーである桂さんという方にGRLKYOTOで出店をお願いする運びとなったので、そのうちあわせを電話で。もともと桂さんの書店を始めようというアイデアは、定額給付金の世帯分によって肉付けされた。という、それ自体が素敵なアイデアでできているオンラインブックストア。DIYとストリートカルチャーがメイン。

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九月十三日、
製図試験。大きなミスをしていない限り受かる。落とされない限り受かる。とは、何がしかを言いながら、何も言っていない。

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九月十四日、
昼、イボのために指を焼いたので、指がいたい。焼かれているときもいたいが、焼かれたあとも半日はいたい。いたみには波があり、それをやりすごすためには、我慢するか、スポーツでもして気を紛らすか、寝るかしかない。ただしスポーツは患部を直接刺激するおそれがあり、直接患部を刺激すればいたみがよけいとひどくなるのであぶない。寝るのはあまり芸がないし、そもそも当のいたみで寝られないときもある。僕は三週間(望むらくは二週間と言われている)に一度、定期的に指をいために行かねばならず、実際にそうし、三週間のうちの数時間をそのいたみをやりすごすために費やしている。来るべきいたみのために予定を調整したりもする。

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九月十四日、
GRLKYOTOレクチャーテキストの校正。その後東琢磨ヒロシマ独立論。東さんは広島の生まれ。ここには物語を推進するドライブとして東琢磨なる人物がおり、その人物のおかれていた状況、おかれてきた場所、なしたこと、なされたことなどから、軍都としての廣島被爆地としてのヒロシマ、そして現在の広島という具合にある広島の複層性が、そしてその断片が、語られていく。ヒロシマは物理的な所属からのみ日本の所有物とされ、外交的なカードあるいはなにがしかの言い訳として利用されているが、そうされるべきではない、ヒロシマは誰のものでもない、という独立を宣言する根拠へと、それらの語りが向かっていく。彼が広島平和公園のみを独立の対象とし付録の独立憲章を書いているのはそのためである。ヒロシマが、独立し、またある意味でヒロシマを、離脱させるのである。

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九月十六日、
港千尋映像論。「見えないものを見」ようとする19世紀的試みから百数十年、「見ることと見られること」との政治性に対して盲目と化してしまったスペクタクル社会に生きる私たちが、どのようにして再度その見る対象をなぞりなおすことが出来るのか、という本、か。港さんの本とはまったく何の関係もないが、どういうわけか大根が煮たくなったので、そうすることにした。