ヒーリン・フィーリン京都南区役所前

十月十五日、
S先生とのお話。京大の桂キャンパスへ。町家を保存するがよいか、町家を取り壊して中高層ビルを建てるがよいか、地域活性化のためにはどちらをとるべきだろうか、という話のもっていき方をされる、とても興味深い研究をされているのがS先生。町家保存が多く叫ばれる中、その高い声量におもねることは容易だが、それが結局は思考の停止につながってしまえば、不幸にもその声が「保存」の阻害要因にもなりかねない。だからこうした「ドライ」な勘定が必要だ。しかし結論を急ぐべきではなく、その一文のなかにある「地域活性化」が果たしていかなるものなのかを吟味する必要があり、その上でその議論に「町家」という要素がどのように関連するのかを考える必要がある。そうした意味で、S先生の話の振り方はとても印象的であり、且重要で困難な問題へと接続可能である、が故に、よりいっそう興味深いのだった。

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ジェニファー・トス、モグラびと、を読む。ニューヨークの地下にはもうひとつの都市がある。これは比喩ではなく、額面どおりそのままの状態で、ニューヨークの地下には路上生活者による都市コミュニティが存在している。その事実には良いも悪いもないが、以前すこし引いたオースターのダンボール考とあわせて読みたい。僕たちは破滅まで災難一回分しか隔たっていないのだ。

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その後GRLミーティング。終了後は外に出てストリートプロジェクション。レーザータグができなかったので、映像を流したり、パソコンにつなげて、ワードを立ち上げ、文字ポイントを大きくして打ち込んだりした。ヒウィッヒヒーもしてみた。場所につぶやいてる感じがなかなか。

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十月十六日、
ネットカフェ。東寺のちかく、ヒーリンフィーリン京都市南区役所前店。店舗入り口がローソンと同じ。要するに、右三分の二がローソンで、左三分の一がヒーリンフィーリンの入り口となっている。メインフロアは二階。そうなっていると何が好都合かというと、ネットカフェ滞在中にもコンビニに出入りができるということだ。このシステムは居抜き物件では難しそうだが、なかなかに面白い試みではあるし、実際そういう提携型店舗も増えてきているのかもしれないと推測する。この店舗の特徴はそれだけではなく、駐車場がいやに大きいというところも忘れてはならない。ほんとうに大きいのだ。
個室の大きさは幅1000×奥行き1700、パターンとしては幅約500と約1200のパネルを継ぎ足しているようなイメージ。ペアシートは 1700×1700、マッサージ席になると1400×2000、ペアシートはもう一タイプあり、それは1700×2100で、長手の2100から1700 を引いた約400分が扉のない入り口に当てられていた。400は狭すぎかもしれないので、これは図り間違いかもしれない。ヒリフィリおなじみ推薦図書は今月ももちろん健在で、曰く「映像化コミック」とある。視聴率上昇中!?今注目のコミックです。ヒリフィリスタッフより。タイトルとしては、JIN、僕の初恋をキミに捧ぐ、Real Cloths、君に届け、Fairytail。カバチタレ!を読む。

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十月十七日、
造形大のオープンスタジオ。ある一室での話。壁面が部分的に、長方形分だけ、暗くなっていた。そこにはなんらのキャプションも説明もないので、その室へ入ると壁が部分的に黒く着色されているのかと見まごう。でもそれは着色ではない。何かが映っているからだ。それはもしかしたら鏡かもしれないと思い、近づいてみると、そこにいるべき自分がいないので、これは鏡ではないということが分かる。写真にしては奥行きがあるので写真ではないだろうと踏む。同じような理由で映像面でもないことが分かっている。そして最終的に、それがただの孔であることに気づくのだ。隣の作業室での作業工程を見せるためだろうか、薄い壁面に四角い孔が空けられており、自分が今いる部屋に比べ、向こうの作業室には誰もおらず、暗くなっていたのだった。

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中山英之さんによるO邸のオープンハウスへ。現地にてこのブログを読んでいるという方に出会う。バロンさんにも会う。

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橋本治、乱世を生きる、を読む。そこは畑じゃないかもしれないのに、そこを耕す振る舞いがあまりにも見事なので、あたかもそこに畑があるかのように錯覚してしまう。橋本さんの文章はそんなイメージ。それを見ている僕たちに必要なことは、橋本さんの「耕した」畑を、畑だと納得しながら種をまくことではなく、そこが本当に畑なのかを正しく吟味し、その上で種をまくのか、別を耕しなおすかを決めるということだ。

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十月十八日、
オープンハウスひきつづき、おかげさまでrep来場者が多い。

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十月十八日、
京都国立近代美術館でウィリアムケントリッジ展。最終日。画面を描き、消し、もう一度描く、という細かい作業の積み重ねで彼の動画が出来上がる。消そうと思っても、消しきれなかった痕跡は、動画のなかであたかも残像のように見えてくる。彼はときどき、とても奥行きの深い画面を挿入することがあるのだが、その奥行きの深さと「残像」の現象とがぴったり一致してしまうことで、自分が今何次元目を見ているのかよくわからなくなってくることがある。個人的にはそこに一番の面白みがあった。カタログを買う。

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十月二十日、
造形大春秋座でダムタイプ「S/N」の上映会&浅田さん、高谷さん、Bubuさん、高嶺さんによるトークイベント。印象に残った発言はこんなシチュエーションで放たれた。上映後の対談中、故古橋さんがドラグクイーンに扮して多くの人と踊っている映像を交えながら、フロアにいたモブノリオさんがコメントを述べている際のこと、どういうわけか衣服を脱ぎはじめ、タンクトップ一枚になった浅田さんに向かってモブさん曰く「お、踊りだされてもいいんですよ!」

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十月二十一日、
久々のMKKミーティング。ウェブサイトをページ毎に吟味する。ポータルあり、レポートあり、マップあり、コラムもある。もちろんリソースもある。

まったく何の関係もないが、とてもうまいなと思った名刺。bad banana blogより。

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十月二十三日、
以前松田さんがいらしたときに収録された分の建築系ラジオが挙がっていた。