亜熱帯

十月三十日、
名古屋へ。名古屋のネットカフェ亜熱帯へ。栄住吉町。夜の繁華街の中にあっても一目で分かるような、存在がとかく淫靡。名前もたたずまいもラブホテルのようである。シナプスのどれとどれがくっついたらネットカフェに亜熱帯などという名前がひらめくのだろうか。ところで、ここにくるまでの途中にクラブが一軒あり、タイミング的に考えても、コスチューム的に考えてもハロウィンのパーティーをしていたようで、多くの若者が路上に集まり、割合的に言ってぴったりな例をあげると羊の群れをコントロールする犬になるが、その犬のSPが羊の間を縫って歩いている。放蕩、の二文字が頭に浮かぶ。ネットカフェ亜熱帯はビルの一階から四階(最上階)まで全てがネットカフェで、その隙間隙間にほかのアクティヴィティが入っている。麻雀とかスロットとか。店内に入るとザーザーと音がするのでクラブの喧騒がここまで届いているのかと思いきや、注聴してみると、どうやらそれは波の音を流しているようだと認識できひどくびっくりする。亜熱帯だから波なのかととりあえず理解しようとしてみると、確かにところどころにそれらしい物体が配置されている。結果的に快活クラブに似てくるな、と思ってしまった皮肉。どちらが先かはさておいても、なぜネットカフェは亜熱帯にふれるのか問題だ。かと思いきや四階では造作物としてコンクリートブロック塀が。しれっと立っていた。各個室のドア的部分につけられた潜水艦の窓のような窓の存在もあわせ、なにか自分にはあずかり知らぬ意味においてこれが亜熱帯であるとされる世界をひとしきり想像する。王様の仕立て屋を読む。

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十月三十一日、十一月一日、
一般公開日だったので愛知県半田市にある半六邸へ。数百坪の庭を持つ約二百五十坪前後の数奇屋建築だ。前日の中日新聞に取り壊し決定のニュースあり。事実その大部分はすでに朽ち果てている。関係者に話を聞くと、そのうちの何割かは残るかもしれないとのこと。ただ問題なのは、その何割かにもっとも残すべき建物が入っていないということだ。人が入っているとまだまだ現役に見えるのに、暇を与えるのはいつも人間だ。十二月には市へ売却される。ところ代わって門司の三宜楼は保存が決まったようだ。門司と半田。過去へのまなざしを観光に接続せんとする状況が似ていなくもない。内実はもちろんわからんが、三宜楼の保存は本当に正解。正解であるべきだと思う。周辺環境も含めとても素晴らしい建築。さて半六邸。一般公開にあわせてここがギャラリーになるというので、その作品も見る。壁に入ったヒビをとにかくトレースするもの、フォトグラムをつかって庭の植物を写したものなどあり。制作者と話す。それから前日くらいに図面が見つかったそうで、それをコピーさせてもらう。複数枚。増改築の跡が見えて面白い。どうも数回所有者か使用者がかわっているらしい。この建物も相当に癖があって面白い。

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十一月二日、
QueryCruise vol.2の関係で講師の佐野先生(京都府立大)のところへインタビューを取りに行く。佐野先生がどのような人となりで、どのような分野におり、どのような研究をなされ、どのような問題設定をなされるのかなどをおうかがいする。30分程度。景観問題はどのような意味において問題なのか、が大テーマということになりそうだ。権力関係を云々していた過去から、実際的な政策に目を向け始めた昨今の政治学の流れなんかもちょっと説明してもらう。全文は12月終盤くらいに挙げる予定。ウェブサイトに。

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十一月三日、
GRLKYOTO搬入。運転する。

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十一月四日、
GRLKYOTO会場構成。元田中、アンチョビビルの三階に基地をつくる。

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十一月五日〜十六日、
GRLKYOTO。 Ustreamを使用し、要所要所でライブストリーミングしたり、記録したりした。誰かが話しているときも、ご飯を食べているときも、酒を飲んでいるときも、警察がきたときも、誰もいないときも、ストリーミングして記録したりした。ちなみに警察が来たというのは、どうやらパンフレットに「何かが起きる!」とか「革命のつつしみについて」とか書いてあったので、心配になって通報した市民がいたらしい。残念ながら革命は起きなかった。萌芽はあったかもしれないけど、情況は遠かった!それはまあいい。個人的に管理を担当したライブラリもいろんな人から本を貸してもらって素敵なラインナップになったし、第一誰のライブラリかよくわからなくなった、と言うところが一番良かったな、それからNot Pillar Bookさんの売り上げも割とよかったのでほっとした。NPBさんのチョイスはずいぶん好評だった。さすがだ。廣瀬さんとはあつかましさとつつましさについて話した(11月末から一週間ほどhanareradへ滞在することになった「ごめんね非革命的理由で使っちゃって」とのこと。いいです)。一方大原で集まって農業を営む若手農家グループオーハラーボさんたちが「なんだかんだ言ってもまず自分たちが面白くならんと」と言っていたのはすごいと思った。「大原に来てもらえないからね。」なかなか言えないと思う。
特別関係のないひとびとがひとところに集まって、それぞれ自分のことをしている、ときどき一緒に何かする、という状況が面白く、GRLおらんでもいいなと思ったりもした。イベントも要所要所であったけど、枠組みが決まりすぎててちょっとフォーマルだなというかんじ。ちょっとむずがゆかったし、そのための労力も少なくなかった。GRLKYOTO基地をまたどこかにひっそりとつくり、会費制にし(月500円とか)、1年くらいたったときに、やっとオーケーだなと言えそうな気がする。どうだろうか。

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ちなみにこの期間中二回の金曜日があり、結論から言えば一回目は基地近くの漫遊堂へ行き、二回目は基地で寝てしまっていた。

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十一月九日、
立命館加藤政洋先生へのインタビュー。人文地理学って一体なんなんですか、という話。三十分とって、残りの時間は加藤先生が今度出版されようとしている都市の話、からの、そば話。主にそば話。インタビュー中、なんとなく回ってるな、という感覚があった。うまく行っている、行っていないは別として、とてもいい気分だった。

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十一月十七日、
GRLKYOTO 片付け。前日がメトロでのパーティで、みんなはしゃぎまわっていたので、とても静かに、粛々と作業は進み、17時には終わる。Kさんと家で鍋。この日、この時間に、KBSホールに菊地成孔氏が来ていたというのに、のんきに鍋をつついていたことを後悔するのは、翌日の十八日。

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十一月十八日、
その翌日の十八日には、京大へ行き、都市工学科の大庭哲治先生にインタビュー。大庭先生は以前コンサル系のお仕事をされており、国や市を相手にしながら都市のリサーチを行われていたので、現在までそのあたりの影響がどうでていますか、だとか、そもそもどのようなことを研究されていますか、というような話。計画、っていう概念をどう考えるか話も少々。

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十一月十九日、
髪を切る。KitsouneのTさんと映画の話。渡辺謙が出ていた「鍵師」は面白かったという話。