Media Cafe Popeye河原町三条店

十二月十三日、
hanarerad打ち合わせ、のあとにGRLKYOTOブックの打ち合わせがあり、話の内容としてはGRLKYOTOの12日間を通して伝達したかったことをzineにして伝える、というのがポイントなのであるため、当該12日間のドキュメンテーションとはちょっと違うものにしたい。というのも、ひとつのテーマのもとに各出来事の意味を再構成するからであり、それだからゆえに、そのテーマに諸々の運動が狭められてしまうのではないか、という反論が出てくるのももっともだと思う。ページの校正をきちっと見せて納得してもらう他ない。

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十二月十四日、
大山崎くんだりまでわざわざ行ってサントリーウィスキーの工場見学をする。蒸留樽のかたちがひとつひとつ違うことを発見する。そもそも蒸留樽がなにかというと、中でアルコール分を蒸発させ、その水蒸気を別所へ持っていくためのものがいわゆる蒸留樽であり、そのふくらみの持ち方や造形が味の微細な変化をもたらすのであるが、どういう形状がどういう味をもたらすのか事前には分からないため、いろいろつくっておいて、その結果できた物を事後的にブレンドするしかないのだということらしい。これはかなり空間的な問題であり、一方で状況的にはかなりのギャンブルだ。空間的賭博としての蒸留。コツはみんなきっとつかんでいるんだろう。

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空間的賭博、という現象は、考えてみると、あまねく空間がそうなのかもしれない。機能主義的とは言うものの、一方でその「機能」なるものの一意性、つまり実際の行動とのつながりは往々にして曖昧だ。つまりあらゆる空間はなにかしらの意味において賭博的ではある。では何がかけられているのかといえば、行動の帰結としての空間であり、誰がかけているのかといえば、クライアントと建築家である。

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十二月十五日、
かぜをひく。

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十二月十六日、
忘年プレゼンに向けて壁をきれいにする。釘やビスを抜いて、パテを塗るくらい。その後MKKのプレゼンテーション用にスライドを構成する。なにかしらの結論をつけようとは思っておらず、ネットカフェの空間性(これをMKと呼ぶ)を基点にして現在過去の諸空間にコメンタリーを入れていくというのがねらい。でもあえて問題を提起しようとするならば、ネットカフェの個室がパブリックの特殊な形態を実現しているのではないか、というところだろう。ざわざわしているけど一人、というところがポイントだ。でもやっぱりそれだけじゃない。たとえば茶室という空間形式が最も前衛的だったのは、「囲い込む」という行いにおいてであった、ということをMKを基点に考え直してみたいし、一方でネットカフェが既存店舗、とりわけ2階以上の「空中物件」に強いというところを枕に、既存空間への介入を考えてもみたい。こうしたいろいろをひとつのラインにとどめてしまうのは面白くない。

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十二月十七日、
MKKプレゼンスライドの構成。こっそり撮っているネットカフェの写真を配置していくとその場所の記憶がもう一度浮かび上がってくる。

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今朝hanareradに宿泊していた松根充和さんに今日sin-biでパフォーマンスがあるということを聞き、案内ももらったので、夜に行くことにした。突然決まったパフォーマンスでアナウンスがあまりなかったようなので、観客はとても少なかったけど、そのおかげで観客とスタッフと松根さんの近さが際だって、ちょっと心地よい空間になってさえいた。食材を使ったパフォーマンスだったので、今日使わなかった食材、をいくつかおみやげにもらって帰る。

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十二月十八日、
GRLKYOTOでもご一緒したオーハラーボさんのじゅんさんのところへ行ってきた。オーハラーボさんとは、大原に就農した若手でつくる有機農業生産者グループのことで、六組の方々がそれぞれ個別の畑を耕し、共同で出荷したり、毎週日曜日には里の駅大原で店を出したり、頻繁に集まってのんだりしているらしい。じゅんさんは音吹畑(おとふくばたけ)のじゅんさん。そのガイドでさっちゃんさん&デイヴィッドの畑を見に行く。ここは昔は雑草がボーボーだったそうなのだが、今となっては彼らのおかげでかなり畑となっており、今後もよい畑になっていきそう。どんどんアイデアがわいてくるのだそうだ。デイヴィッドがばしと土地を選ぶと、さっちゃんさんがその手続きをし、ここを耕せとデイヴィッドが言うと、さっちゃんさんが耕し、ここには池だとデイヴィッドが言えば、さっちゃんさんがそこを池にすると言う。神話に出てきそうだ。じゅんさん宅には奥さんのみささんもいらして、美味しい珈琲を入れてくれた。また手伝いに来ますと言ってかえる。

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のネットカフェ。河原町三条のMedia cafe popeye。地下へ下がるとドアがあり、さらにもうひとつのドアを開けると前面に水盤が見える。間仕切りのちょっとしたギミックだ。そこを折れてカウンターへ。携帯の電波が届いていないというところにここがまさに地下であることを実感するわけだが、なんの地下かというと、教会の地下なのだ。カタコンベと呼びたい。いや、怒られそうだし、カタコンベと呼ぶのはやめよう。でもこのネットカフェは教会の地下にある。一旦入ればその名残はもちろんない。太い柱が店舗の要所要所に顔を出しているため、必ずしも空間の見通しがよいわけではないが、間仕切りの上端から天井までの空間の空きが洞窟っぽくてよい。奥にある禁煙スペースに至るまでの通路がトンネルとしか言いようがなく、ここにも洞窟の比ゆがあるようだ。
ビジネス、フラット、リラックスシートはそれぞれ幅1100×奥行き1900、入り口の幅は450。高さは1500程度。三席しかないマッサージシートは幅1200×奥行き1900。ペアシートには二種類あり、積極的に分けているというよりも、一室柱型が室内へ入ってしまっているために歪になったというかんじ。歪版が2200×2200、四方2000を超えての空間は迫力がすごい。もっとすごい迫力を体験したかったら、フジヤマカフェリラクシングの5人席を独り占めしたらよろしい。ペアシート通常晩は大体奥行き1700×幅1700というところ。以前EZCAFEのときに言ったことを覆すようだが、ここはシャワー無料でした。

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十二月十九日、
しっかりと忘れるための忘年プレゼンテーション。開始ギリギリまでMKKプレゼンのスライドを配置しなおしたりしていた。