ゆう遊空間五条店

十二月二十日、
ミルクとともに―誰しもが使えるものを
http://www.miesbcn.com/en/act2009/aiweiwei.html
ミース・ファン・デル・ローエバルセロナパビリオンはまったく疑う余地もなくそびえている。そのコンクリート素材の重量感のなさは、ほとんど地面に従属していないかのようだ。石やガラスも建築にとっては何の目新しさもないが、今となってはそれらが啓蒙時代を通し見るためのレンズや鏡となっている。プール、空白、他のきっちりと磨かれた表面に沿って、周囲のすべてを、つまり建物や空や木を反射する無時間的なまなざし。ここには神のみ住むことができる。

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萩書房にてデビッド・マコーレイの『都市』を買う。都市の、城の、大聖堂の、ピラミッドの、モスクの(原書のみ)建設過程を詳細な図説とともにわかりやすくつまびらかにしてくれるところにマコーレイの仕事の妙味がある。他にも石井和紘『日本建築の再生』やクンデラ『生は彼方に』なんかを買った。それから二条通りの古い古本屋で+81が100円だったのでそれも買った。ファッション特集の号。

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十二月二十一日、
雨林舎にて欅展。欅さんは骨董屋。オンラインや市なんかでお店を開いている、若い女性の方が店主。古い電卓が動作可能な状態で置かれていたのでポチポチしていると、いいですよね古い電卓は、という話になり、何がいいんですかね、というと、おそらく、発光してます!というあの感覚がいいのだろう、ということになる。古い電卓に表示される数字は、ちゃんと発光しているのだ。ACアダプタが必要なほどに(接続口があった)。入れ子状になる箱を買う。マトリョーシカ状の箱。

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おそらくこのような視座はミースのなしたことを誤解している。等価さに対するモダニストの夢が置き去りにされているし、住むための建築であるというところも忘れられているし、あらゆる普通の人々が持つ必要性もそうだ。デザインに関して言えば、ミースはしばしば「一般解」や「共通言語」といった表現を使用したのだった。

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十二月二十二日、
QC2のチラシを各所に送付する。

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わたしはミース・ファン・デル・ローエバルセロナ・パビリオンにレディメイドとして、つまりそれが経験するアクティヴィティや、それがどのように見られてきたのかという問題としてアプローチした。実際、建物は静的なものではない。そういうわけで、私の介入は居住機械の新陳代謝を探ることになった。たとえば取り替えられる水。というのも水は常に取り替えられている建物の一部であるからだ。事実、二つのプールの中身は観者には知らされず常に取り替えられている。一方のプールは隔週排水されており、ポンプによって水を外の大きなプールに再循環させるのだ。プールの底にある暗いガラスは綺麗にされ、プールは再び満たされる。

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十二月二十三日、
不変で、無時間的に見えるモニュメントを保持するために通常の作業がなされる。建物まるまるが完璧な再建によって屹立していることを忘れるためではない。ミルクとコーヒーとの介入によって、このモニュメントの下層が意識化される。ミルクとコーヒーは流し去られてしまうことを拒絶するのだ。ミルクとコーヒーの状態を保つことは、身体を保つことに等しい。つまり光、空気、暖かさに対する努力を要することと・・・なんにせよ成長と変化とを推奨するものだ。幾何学の活力、集合の明快さや日常生活と混ざり合い啓蒙された楽観主義の明快さとはなにか?過去の過失を正そうとする勇気において、モダニズムはあらたな過失を犯したのかもしれない。今日の文化的態度は過失を恐れない。新たな過失に恐れず一歩進んでいくのである。

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edward del rosarioの絵がいい。寄る辺ないまでにべたっとした背景。

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十二月二十四日、
アイ・ウェイウェイ
この介入のために使用されたミルクは飲めません。

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キャシージンの一号と世界の現代建築北米編1を買った。マルセル・ブロイヤーに多くが割かれ、ライトの落水荘やジョンソンのガラスの家なんかも載っていて、イームズやソリアノのケーススタディーハウスも載っている。昭和28年印刷。装丁は原弘。建築家なしの建築を都市で実践したような80年代の写真集もあって、それが800円だったからそれも買った。オリジナルとパロディが併置されているのでときどきうっかりオリジナルの方にキッチュさを感じてしまったりする。どちらかというとベンチューリの仕事に多く影響を受けているような気もする。

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十二月二十六日、
O邸忘年会。東京から浅子さんがいらしていたのだった。O邸へ夜訪れるのは初めてだったが、やや暗がりのなかで見ると、回廊のような印象。間口のスケールが肝か。晴天、外部に面した大ガラスにかかるカーテンを引いて見ると、おそらく通路の延長のようにも感じられるのではないだろうか。とか思う。浅子さんと久々におあいする。

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ネットカフェ。ゆう遊空間五条店。京都駅から徒歩圏内に約二つのネットカフェがあり、片方は八条口から徒歩数分のtopscafeで、もう片方が烏丸通り沿いにあるこの店舗だ。わりと歩くことになるがな。部分的に養生が貼ってあるのでどうしたのかと思っていると、シャワー室改装中につき一時間100円とのことだった。リクライニング席は幅1200×奥行き 2100、ペアシートは1800四方。ここには談話室という室があり、2600×3400の大きさだったのでまさに室になっているのだが、なかにはこたつ的なものがあり、テレビやテレビゲームがあり、黒ひげ危機一髪や囲碁などがあり、談話室というよりも友達の部屋感覚が全面に押し出されていた。なにはなくとも時間だけは潰せるな、と思った。この手のフリースペースは例えば桂のほうにある「花はな」にも、新京極にある自遊空間にもあるが、談話室、フリースペースとしか言いようのないこれら節操のない空間が、特定の機能なるものからするっと避けているようなところに魅力を感じたりする。おやすみプンプンを読む。

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十二月二十六日、
http://www.youtube.com/watch?v=gwtmziuTG-g
ロンドンで建築やってる友達のJihoi Leeがつくった山之内浄水場のビデオ。彼女は建物のモニュメンタリティを遊ぶような映像をつくろうとしているようだ。今度はガーキンを宇宙まで飛ばす映像を考え中とのこと。

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十二月二十七日、
QC2のためのチラシくばり。