トレランス寛容
横浜駅近くには屋台がある。
位置関係としてはこのようになっている。この赤いところが屋台群。
昼間はこのようになっていて、右の看板にはこのように書いてある。
「屋台撤去について警告:新田間川沿いの屋台(南幸橋から内海橋までの間)は、横浜市が管理する道路区域を不法に占拠している物件で、通行する車両、歩行者の妨害となっているので、ただちに撤去するよう警告する。
ちなみにこのメッセージは昭和63年からここに立っている。
でも別にそれほど「妨害」になっているわけでもなさそう。しかし、この「なあなあ感」に怒れる人もいる。
市有地を占有許可を受けずに占拠している状態を看過することに疑問を感じます。明確な法的見解を聞かせてください。また、汚らしい汚水が流れ出している屋台もあり、市有地が汚されております。大変汚らしく不潔です。公益に反しておりますので、できるだけ早く、強制代執行してください。できない場合には、法的根拠を教えてください。それから、私が市有地に許可を得ずに屋台を営業した場合に、横浜市がどのような措置を講じるかを教えてください。
ひとことでいうと、「はっきりさせろ!」と言っている。
「みなさん」はお怒りの様子だ。しかし、正直なところなぜこの人が怒っているのかはわかりづらい。汚いなら「汚すな!」であって、「これを潰せ!」は一足跳びだ。その裏には「あり/なしをはっきりさせろ!」という気持ちがある。そして人はこういうジャンプを「みんな困ってるから」で正当化してしまいがちだ。「回答」の人はどちらかというとなだめている。
- これは「不法占用物件」として撤去されるものと考えてるよ
- これまでも撤去について指導を行っているところだよ
- 現状の道路の通行機能については、必ずしも著しく公益に反するとはいえないよ
- 当方が召集する話し合いに相手方が応じてくれてるよ
- 話し合いの過程でこれまでに4軒が自主的に撤去しているよ
- だから他の手段によってその履行を確保することが困難な状態ではないよ
- ということで代執行による強制的な撤去は今のところ考えていないよ
- でも新たに西区管内の道路に許可を得ずに屋台が設置されたら適切に指導するよ
まあまあ、お気持ちは分かりますが、それほど困っている人もいないことですし...という「回答」の人のニュアンスがうかがえる。屋台はあるべきか、なくすべきかは簡単にどちらとは言いづらい。いろいろと与り知らないことがあるだろう。でも、白か黒かのみでパリッと決められた都市は楽しいか? と言われると、「楽しくなさそうだな」と思う。だから、白か黒かじゃない、グレーなところ、言い換えると「寛容さ」を背景にしたところがあると都市も楽しい、とは言える気がする。
上の地図の青いところ、川沿いに移設する、というのも一手じゃないですか、といいたい
きっと上のような言い方に賛同する人は少なくないと思う。でもやっぱり屋台は撤去される運命にある。ただ、ここで「屋台はあるべきだ!」という意見は「屋台があると汚くなるから潰すべきだ!」と結構似てくる。後者は「何も無い」に至るが、前者もたかだか「屋台村」に至るだけだ。どのみち「それが欲しかったんじゃないのに」と思うだろう。そのとき、より欲しがられるだろうものは「まあすごく困る人もいないし、あってもいいよね」がある程度許される、寛容さなんじゃないかと思うのだ。この寛容さがない、「ゼロトレランス」な都市も、世界には多い。