On the Moon by Arjen Oostermanその1


Volume#25 Getting there, Being here

オン・ザ・ムーン
エージェン・オースターマン


いまだかつて人が月に足を踏み入れたことはない。と、いまだに信じている者もいるにはいる。そういう人はショックを受けて(きっとまた受けることになる)いることだろう。この世紀が終わるまでに、新たな月面着陸のミッションでは、月をより精密に探究するよう基地を打ち立てての長期滞在が予定されている。月への定住はもはや絵空事なんかではなく、世界中の科学者の間でその調査や発展にとって焦点化さるべき次なるステップだととらえられている。「そこにたどり着くこと」はいまだ課題―使えはするが月に戻すことができない宇宙旅行用装備もあるし―であるが、「そこに滞在すること」は、より大きな問題となっている。探究や開拓の目的地として、あるいは主にハブとして、月は「次の駅」なのだ。


月に関する特集を組んでみないか、と同僚に話したとき、彼はこう返した。「もう地球に問題は残ってないってこと?」彼はこう聞こうとしたのかも。「月ってもう時代遅れじゃない? いまはどっちかっていうと火星じゃないか?」と。じゃあ後者の方から考えてみよう。この特集をどうするかという数週間の決定期間のうちに、新聞は、モスクワで行われた520日にわたる火星ミッション試験について、新しい「NASA Mars-rover」(2011年に打ち上げられる)の試験について、そして今年の終わりに国際宇宙ステーションへ送られる予定のヒューマノイドロボット「Robonaut2」について、伝えていた。それは、地球外への定住やディープな宇宙旅行に関わるR&D(研究開発)が現在行われている、という、氷山のより報道価値のある一角でしかなかった。そう、宇宙旅行のゴールはシフトしたのだ。でも、私たちがそのゴールに到達しようとすれば、どのみち月へ行くことになるだろう。ここで前者の方に戻って考えてみると、その答えは「ノー」となる。私たちは地球上の問題に事欠いたわけでも、それにうんざりしたわけでもない。建築を試験することは潜在力(と弱点)を発見するよい方法だ。だから建築という、私たちの定義における人類活動の中のこの領域を含み込むことは、興味深く、そればかりか重要なことであるとさえ考えている。もう一度含み込むべきだ、というべきか。


現在の宇宙旅行や長期滞在調査に着目してみると、どれほど建築、計画、そして都市デザインがうっすらとしかそこに関与していないのかに愕然とさせられるだろう。ただ、逆もまた然り、かも。建築は宇宙旅行技術や地球外居住の可能性からさほどインスピレーションを受けていない、と。ここで、地球という重力領域を超えて人間の影響を拡張して行こうという野心が以下のようにはっきりと語られていることに注目してみよう。


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