山と建物見学会

今日はバスで社会見学。木が伐られ→加工され→使用される現場を一日で見て回ろうというハードスケジュールだった。移動の関係上この順番で見学したわけではないので、以下木の立場に立って今日一日を反芻してみましょう。

伐られているところ。というか伐られたあと。スギです。涼しい。
林業を営まれている方(小林さん)にお話をうかがったのだが、主な仕事は枝打ちと間伐、あとは伐採と運搬。枝打ち(節を減らすために枝を伐ること)はよい材を作るために必要で、間伐(間引きのようなもの)は木同士の競争をスムーズにするために必要。ちなみに横倒しになっているのは乾燥中のスギ。生きていると250パーセントくらいの含水率なのだが、こうして乾燥させると大体三ヶ月くらいで100から80パーセントくらいになるらしい。ちなみに雨ざらしになっても表面から水分が浸入することはないとのこと。

まさに今加工されているところ
移動する車に固定された木を、固定されているのこぎりに通すことで切っていく。この時点での含水率を具体的に聞きそびれてしまったのだが、まだ結構湿っているとのこと。切ってみると反りが出て、時間がたつごとにこの反りが大きくなる。

おわかりになるだろうか。左の木が右に比べて若干反っている。この「反りシロ」を勘定した分、求められる大きさより少し大きめにカットするとのこと。

使用されているところ。床材にスギが使われております。いい香り。
今日一日通して木にかかわる様々な人のお話を聞かせていただいたわけだが、国産の木材に対する建築家の不勉強を不安視する意見が多かった。ちなみに流通の問題で国産木材を遠くの場所から取り寄せるより外国から取り寄せたほうが安く上がる事実を嘆いたのは石山修武だった。一方で建築家が木の特性を深く理解しようとせず、他材の代替物としてしかみないことに憤るのは二川幸夫藤森照信と中村義明だ(2003年GA誌の対談にて。予習プリントでした)。コントロールが利かない木材の深さを逆に設計のバネにするような取り組みが必要だし、木材の多様な性質(柔らかさ/硬さ、温かさ/冷たさ等)が起こす触覚的な差異をビニルのクロスで無視するのはちょっと残念だ。木材を化粧材として使うことによって生産と流通の流れをもっと活性化することも必要だと思う。あまりの一般論だけど。

おまけ
小林さんが仲間たちと作業する前日に寝泊りするための小屋が、バスを停めたところのすぐ横にあった。八角堂という(右下にネームプレートが・・・あ、見切れてる)。築20年の校倉造で、板葺きの屋根にも味が出ている。

小林さんといろいろ話しているうちに中が見たくなったのでその旨を話すと、特別に探訪させていただけることになった。中央に囲炉裏、積まれた丸太の隙間にはロープ、隙間風対策のダンボールと生活感が全体に充満した心地よい空間。こんなところで鍋がしたい、と誰もが思ったことだろう(僕は強く思った)。