戸村浩のこと

5月11日の日曜まで東京ミッドタウンのFuji Xerox Art Spaceにて戸村浩展が行われています。

展示された形態群にしっかり興味を持ってしまったのですが、その一つ一つの「かたち」の意味よりも、そもそも戸村浩その人が何者か分からない。調べようと思うもののネットではほとんどヒットなし。展覧会カタログを取り寄せてみてもいまいちピンとこない。というのも「雰囲気からしておそらく科学者だろう」とか、なにかそういう安易なレッテルづけで片付けるべきではない気持ちになるからなのだ。例えばこんなエピソードによって。

学生時代のある日、「立方体を一平面で切って、2つに分割された形が合同になるようないろいろな場合をみつけだし、なるべく多く形作って提出しなさい。」という課題が出た。戸村氏はまずプラスチック板で立方体の箱を作る。それから授業中にこっそり教室を抜け出して、酒屋にブドウ酒を買いに行く。そしてプラスチックでできた立方体の中にその体積のちょうど半分だけブドウ酒を注ぎ、蓋をして完成。
それが上の画像。名づけて「ワインキューブ」。無限にある答えをひとつの冴えたやり方でプロダクトにしてしまうところに惚れた。

基本形態の構造―立方体はブドウ酒の味がする (1974年)

基本形態の構造―立方体はブドウ酒の味がする (1974年)

時空の積木

時空の積木

とりあえずこの2冊をなんとかして読もう。ちなみに画像はDMと展覧会カタログより拝借。カタログに寄せた戸村氏ご本人の文章がとてもお洒落。こんな文章が書きたい。おすすめ展覧会です。