カーンの語

デザインとは何か (1961年) (角川新書)

デザインとは何か (1961年) (角川新書)

第四章にルイス・カーン評あり。ミースに代表される「機能主義」の対立項として言及されていたのだけど、ここでカーンの「Form」「Realization」「Design」の3語が効果的に参照されていたので紹介。ちなみにカーンについては以前ちょっと触れたことがある。そのときも書きましたが、彼の「語彙」には独特なテイストが込められているので注意したいところ。

「スプーン」を例にすると

  • Form:「なにかをすくう」「それをもつ柄がある」といった「本性」のこと
  • Realization:Formを発見すること
  • Design:Formに実際の大きさや形を与え、材料を決定すること

いわばFormは「何をwhat」であって、Designは「どのようにhow」と言える。そしてRealizationされるものは「何を」にあたるFormであり、Formとはすべての人が考えていたもの、つまり「フェアリー・テイル(おとぎばなし)」のようなものとして存在していたという点で、それを実現化するRealizationとは全人類の「夢」ということができる。そしてRealizationをどのようになすか、がDesignということになる。

ルイス・カーン建築論集 (SD選書)

ルイス・カーン建築論集 (SD選書)

最近SD選書になってお求めやすくなった「建築論集」を参照して次の点に着目。川添氏はDesignは個別的なものであり偶発的なのだけど、FormがDesignに先決するわけではなく、Designが積み重ねられた結果として生まれ出るものがFormである、との旨を述べるが、カーン自身は「『何』についてのリアライゼイションは、『いかに』に先駆します」との言でFormはDesignに先決する、と述べている。
川添氏の言はなにか「転用」(かなにか)の観点を意識しながら書いているように感じられる。図式としてはカーンのほうがすっきりして分かりやすいけど、なんだかフォーム・エイドス・アリストテレス!みたいな仰々しさがあって「つれない」分、川添氏の読みのほうに肩入れしたくなる。結構面白そうなテーマになるかも。